2013年7月 8日 (月)

音楽アーカイブ:編曲事始「リゲインの歌」

今からほぼ四半世紀前の1989年、一世を風靡したテレビのコマーシャル「リゲインの歌」をピアノ伴奏付き混声合唱に編曲した。私の記録によると、これがまとまった編曲作業の最初であった。

当時所属していた音楽同人SAPAのメンバーに歌ってもらい、結構ウケた。ピアノは勿論、妻ジョアンナ(仮名)。

それ以前も編曲をしなかったわけではない。しかしそれらは断片的だったり、完成度が極端に低かったりで、自分としても記録に残したくなかったのだろう。当時書き散らした五線紙をひっくり返しても、これといった「作品」は見つからなかった。

この「リゲイン」に力を得て、その後編曲活動も充実して良さそうだったのだが、なぜか次の編曲まで8年もの歳月が流れている。どうしてこんなに間が空いたのだろうか?その頃、作曲活動は(質はともかくとして)結構盛んだったのだから、なおさら不思議だ。

2013年7月 7日 (日)

音楽アーカイブ:パッサカリア

整理番号15番「パッサカリア」は1991年に作曲した。文字通り低音で繰り返されるパッサカリア主題に載って高音が自由に歌い継ぐという形だ。私はこの曲を7、9の和音の連続で作った。そうすると若干ジャズ的なたたずまいとなった。

これまで私が作った曲はバッハ、ドイツロマン派、ドビュッシーの非機能和声の間を浮遊していたが、今回はその傾向から少し外れた路線となったのである。

初演は7年後の1998年、音楽同人SAPA公演の際、妻ジョアンナ(仮名)に弾いてもらった。再演も妻だったが、3回目は2000年におけいこ発表会で娘エレーナ(仮名)が弾いてくれた。こんな嬉しいことはなかった。

以上のように私にとっては思い出深い曲だが、それ以来演奏の機会がない。曲の響きとしては悪くないと思っているのだが、演奏技術を易しく作ったので大曲のオーラが無い。それが原因かもしれない。

「ピアニストがドレスで着飾ってピアノに向かうと、観客は無意識に技巧的に難しい曲を期待するから、こういう易しい曲を弾くと違和感がある」というような声もあった。

結論として、この曲は家庭やサロンで気軽に流すサティのような曲と位置付けるのがいいかと考えた。

2013年7月 2日 (火)

音楽アーカイブ:消えた初演「フルートとピアノの為のシチリエンヌ」

整理番号14番で初の初演を果たした私は、それより前に作曲した整理番号11番「フルートとピアノの為のシチリエンヌ」の初演にこぎつけた。音楽仲間のフルートと妻ジョアンナ(仮名)のピアノで満を持してコンサート当日を迎えた。しかし・・・

その初演は露と消えてしまった。折悪しく上陸した台風により、コンサート会場として確保していた施設の責任者から中止命令が下ったのだ。人々の安全第一ということで、この決定には従わざるを得なかった。こんな事もあるのだ。

結局それから4カ月後、別のコンサートにてピアノは同じく妻ジョアンナ、フルートは別の奏者に入れ替わってようやく初演を果たすことができた。作曲を完成させてから7年もの歳月が流れていた。

その後、この「フルートとピアノの為のシチリエンヌ」は2回演奏の機会があったので、累計3回ステージで音が鳴ったことになる。そしてその3回目の演奏メンバーが後にも先にもこれっきりという珍しさだった。妻ジョアンナがピアノではなくフルートを吹いたのだ。

ピアニストのジョアンナはある時期趣味でフルートを習ったことがあった。そのおけいこ発表会で「フルートとピアノの為のシチリエンヌ」を取り上げてもらったのだ。そもそもこの曲は、フルートの技巧という点では難しく作ってなかったので、初心者の妻でも取り組んでもらうことができたのだ。

しかしその後は再演の機会がない。この曲はどうもフルート奏者にあまり好んでもらえなかったらしい。その理由を考えてみたら、どうやら音域が低すぎるという点が問題だったことに気が付いた。低音域・中音域ばかり動き回ると地味でフルート独特の華やかさが失われる。私はそのへんの事を重視していなかったのだが、それが響いたのだろう。

その反省のもとに、この曲の続編「シチリエンヌⅡ」を音域を上げて作ってみたのだが、それに関する話は後日の記事にまわそう。

2013年7月 1日 (月)

音楽アーカイブ:初めての初演???

このシリーズは昨年の8月に「大学~初めての作曲」をアップしてから1年ぶりになってしまった。「初めての初演」と書くと何だか判じ物のようだが、ややこしい事ではない。自作曲を聴衆の前で演奏した最初の機会という意味だ。

大学時代に作曲を始めてから十数曲作ったが、人前で演奏したことは無かった。そして記録をひもとくと、整理番号14番が初めて披露した曲だったようだ。ちなみに私は作品番号は付けず、作った順番に整理番号を付けている。素人なのに偉そうに作品番号というのが恥ずかしいからだ。

この「整理番号14番」は友人の結婚を祝い、披露宴の席でチェロ独奏にて披露した曲である。曲名もずばり「ウェディング・ソング」。メロディーに重音奏法による和声を付けた簡単な曲だ。

特記したいことは、新郎がヴィオラ弾きだという点。ヴィオラの弦の配列は、チェロのちょうど1オクターブ上だから、運指が似ている。私はそれを利用し、この曲を1オクターブ上げてヴィオラの譜面に書き直し、それを新郎にプレゼントしたのだ。新郎は時々この曲をヴィオラで弾いてくれたらしい。嬉しい限りだ。

2013年4月22日 (月)

作品公開:ギター風に

「たちのみ はるもき」のライブでは自作曲も弾いた。無伴奏チェロの為のスペイン風舞曲より終曲の「ギター風に」だ。これは弓を置いてすべてピチカートで弾き、ギターのような響きを目指したものだ。

最近私は作曲するのに作譜ソフトを使っているが、この曲を作った時はまだそのようなソフトが出回っていなかったので五線紙に手書きだった。その「終曲」部分を公開してしまおう。

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このたたずまいは、作曲を手掛ける人の目には単純で初歩的に映ることだろう。実際、手の込んだ構成や和声はここでは見られない。まあそのほうが親しみが湧くだろうというつもりで書いた。

この「終曲」の演奏は難儀だ。左手は弦を押さえっぱなしで疲れがたまるし、右手は弦を弾きっぱなしで指先が痛んでくる。案の定久しぶりに練習したら人差し指の指先にマメを作ってしまった。そのマメがつぶれ、また練習し、また新たなマメが出来て・・・その繰り返しで指先が固くなった。

聴いて下さった方々はこの過酷な状況がわからなかったと思うが、自分で作った曲なのに、この曲は弾くとヘトヘトに疲れてしまうのだ。まあいい経験になって良かった

2013年4月 7日 (日)

創作日記:日本歌曲―1

創作日記の範疇では、2月20日に「怒りの日-9」を書いたまま1ケ月半以上中断してしまった。一度中断すると頭の中の思考の糸が切れるので、再開するには一種のリハビリのようなものが必要となるので大変だ。

そんな中、ジョアンナ(妻:仮名)の知り合い筋の人から歌曲を作ってみないかという話を戴いた。何事もチャレンジなので有難く3編の詩を受け取ったまでは良かったが、いざ始めてみたらメロディも何も浮かばず、全く手つかずの状態が続いた。

私は希少動物なのかもしれないが、音楽の原点において歌という発想が無い。歌詞が無ければ自分の思うままにメロディと和声を想い浮かべ、構築してゆくことができる。しかし最初に歌詞を見せられても、そこからは言葉のアクセント・抑揚に沿って上下する平板なメロディしか出て来ない。

そうやって思いついたメロディは、どこかで聞いたような独創性に欠けたものとなり、創作意欲が萎えてしまう。要するに歌詞が邪魔して音楽芸術を作れないのだ。もちろん例外もある。それは歌詞が素晴らしいとか、依頼者の協力を得て一種の共同作業みたいな形で進める場合だ。

このような事情があるので私が過去に手掛けた声楽曲は数少ない。
♪混声合唱の為の「烏賊(いか)」(窪田般弥詩):詩を読んで感動したので、私としては珍しく作った声楽曲だ。しかし演奏の機会が無いまま今日に至る。

♪バリトンの為の歌曲「春の夜」(中原中也詩):これはバリトンの友人の為に作った。
「烏賊」同様、詩を読んで素晴らしいと思ったのがきっかけだ。その友人が初演してくれた(ピアノは下手だが私自身)。彼の奥様(作曲家)のレベルと比べると低かったが仕方ない。

♪バリトンとオーケストラの為の歌曲「ノオト」(室生犀星詩):これは作曲コンクール参加作品だ、と言うとカッコ良さそうだが、要するに落選した作品だ。各部分(楽章に相当)で異なる作曲技法を展開した。例えば、伝統的な機能和声、十二音技法もどき、メシアンの音列作法、教会旋法などだ。しかしそれらが空回りしたかもしれない。作曲技法に懲りすぎた為かもしれない。

♪「保土ヶ谷三部作」(伊藤八郎詩):「保土ヶ谷音頭」「HOT保土ヶ谷鴨次郎」「そこに松があるから」の3曲で、保土ヶ谷でのアルコール人脈から生まれた。保土ヶ谷のどこかで演奏してもらえたという話を聞いたが、あいにく居合わせなかったのでわからない。

♪ソプラノの為の歌曲「木樹の緑よ」(福岡美津代詩):いちおう「委嘱作品」だが、私が未熟なために手直しが多かった。そのため初演してくれた歌手とピアニストには迷惑をかけてしまった。

こうして列挙すると多そうに見えるが、私はこれまで約100曲の作品を作っているので、大半が器楽曲ということになる。今回の歌曲三部作が完成するのはいつの事だろうか。

2013年2月20日 (水)

創作日記:怒りの日―9

前回の日記(-8)で第1主題の形について迷ったと書いた。結局最初に思いついた形で冒頭の部分を作り始めた。しかしたちまち壁に突き当たった。いろいろこねくり回しても、どうもしっくりいかないのである。

困った挙句、とりあえず無難な形にしておいて、後日あらためて修正することにした。現在できている冒頭部分は次のようなものである。
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最初バスパート(チェロ)が第1主題を提示し、4小節目でテノールパート(ヴィオラ)が応答する。5小節のチェロの「イ→ニ」の4度がドミナント→トニカの基本的な進行であり、素朴だが、力強い感じが出せたのではないかと思っている。「ニ」の音に若干アクセントを置くと良いかもしれない。

7小節目からアルトパート(第2ヴァイオリン)が主題を奏でるが、出だしはヴィオラと長2度の係留的なぶつかりがあり、流れてゆく感じを強調した。

全体的にバッハの「フーガの技法」に似てきてしまったが、これは仕方ないと思っている。むしろそう聴こえるなら本望だ、というぐらいに考えていないと、これから先を作れないかもしれない。

2013年2月14日 (木)

創作日記:怒りの日―8

4つの主題が重なり合う最後の部分が出来たので、主題がすべて出揃った。では冒頭に戻り、第1主題の呈示から作ってゆこうと思った。しかしそこで筆(実際にはキーボードを叩く指)が止まった。

最後の部分から第1主題を抽出すると次のようになる:
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ところがこの旋律は1番目と3番目の音で7度を構成し、しかもその第7音は先に述べたように「半音上げない第7音」なので何となく粗野な感じが否めない。その一方で、ある種の力強さみたいな雰囲気を醸し出すことはできるが、何となく違和感がある。

では第1主題を次のように若干変化させてみたらどうだろうか?
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この場合は第1音と第3音がオクターブを形成し、力強くもあり、幅の広さみたいな感じも出すことができる。スケールの大きさを表出するのは良いことではないだろうか。

そんな事を思いついてしまったので、またここでしばらく曲作りが停滞した。でもマイナスの停滞ではなく、より良いものを作るための醸成期間だと思えば気持も前向きに転じることができる。もうひと頑張りだ。

2013年2月 9日 (土)

創作日記:怒りの日―7

全体構成がどうやら落ち着いたので、こんどは4つの主題を作る段階に入った。バッハの「フーガの技法」の有名な未完のフーガ(コントラプンクト19)は完成されていれば4つの主題が使われ、最後にそれらが同時に鳴るという想定がなされている。私はそれに倣って最後に4つの主題の同時再現を意図した。

4つの主題を同時に鳴らし、かつ和声的にも調和を保つためには、最初に4つの主題が重なり合ったところから作るのが近道だ。決まっているのはヴィオラのパートで「怒りの日」の第4主題を鳴らすことだけ。他はそれに調和するように作ってゆく必要がある。

私はここである事を思いついた。「怒りの日」の出典の聖歌は変拍子だった。この原型を損なわず、なおかつ4拍子に乗せてみようというアイデアである。そうやって作ったのが次の最終部分だ。

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ヴィオラが鳴らす「怒りの日」のテーマは5拍子で始まる。全体を4拍子で構成すると1拍(四分音符1つ分)余る。これを次の小節に移してしまうというのが趣旨だ。

こうする事により原型が保たれ、なおかつ4拍子が崩れず、なおかつ和声的にも調和して、さらにこの「ずれ」がある種のシンコペーションのようになり、曲に変化を与えるという仕掛けになっている。

この重なりをしばらく温めておき、しばらくして再検討してみよう。このままでよしとするか、あるいは手直しするか、あまりあわてず進めてゆこうと思っている。

2013年1月26日 (土)

創作日記:怒りの日―6

前回の創作日記(-5)で全体構成のダイアグラムを紹介した。その時はこれで構成も固まったなと思っていた。

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しかし時間が経過したら、構成に懲りすぎたかなと思うようになった。「怒りの日」のテーマが割り込んだ事により、前半の第1主題を「新・第2主題」に読み替えるとは、まるで西洋の月の名称みたいだ。

余談になってしまったが、「OCT」は「8」の語源なのになぜ「OCOBER」が10月かという話である。ジュリアス・シーザー(7月)とオクタビアン(8月)の2人の英雄が割り込んだためだと言われているが、この話は主題の番号の読み替えに少し似ている。

そんなややこしい事をせずに、もっと単純に素直にやれないものか。そう考えた私は、単に4つの主題のフーガとし、第4主題(怒りの日)の呈示だけ、少しもったいを付けて弾けばいいのではないかと思った。その結果、ダイアグラムは次のようにすっきりした。

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どうもこれあたりが落としどころではないかと思う。全体形式で足踏みしすぎると、いつまでたっても実際の作曲に着手できない。そろそろ決めちゃおうかな。

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