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2013年3月20日 (水)

小泉百合香・榊原紀保子 デュオ・リサイタル

「Duo Recital」(横浜みなとみらいホール 小ホール)に行った。ヴァイオリンの小泉百合香とピアノの榊原紀保子の二重奏だ。

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二人は在籍した大学は異なるが、感性・音楽性において近いものがあったので共演する機会が多かったそうだ。

今回のプログラムにラフマニノフのチェロとピアノのためのソナタがあった。チェロパートをヴァイオリン用に編曲した楽譜で演奏したのである。私は非常に下手なのだがチェロとピアノをたしなみ、この曲は試しに弾いてみたことがあった。

ピアノパートはさすがにラフマニノフらしい技巧的な作りで私には全く歯が立たない。一方チェロパートはどうかと言うと、かなりの部分は音符をなぞるだけなら手が届きそうな難易度である。では弾けるのかと言うと、一部とてつもなく難しい箇所があるので、やはり手に負えない。

小泉百合香はそのチェロパートをヴァイオリンで弾いた。チェロのように太く歌い継ぐことができるのかと思っていたら、そこはさすが達人、ヴァイオリンの低弦で厚い響きを聴かせてくれた。

榊原紀保子のピアノは過去に何回か聴いたことがあり、その素晴らしいテクニックは知っていた。このレベルのプロの演奏は何も心配しないで聴いていられるのでいいのだが、逆にあまり安心して聴けるので寝てしまいそうになった(笑)。

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ラフマニノフのソナタの編曲について考えた。ヴァイオリンとチェロは、同じ弦楽器とはいえ、その響きに大きな違いがある。もともと違う楽器なのだから、必ずしもオリジナルの響きを再現しなくても良いのではないかと思った。

逆に、楽曲を異なる楽器に移し替えた際、新しい楽器の特性に合わせ、オリジナルとは異なった魅力を引き出すような編曲が良いのではないかと思った。そういう観点で一つ気が付いたことがある。

それは第1楽章の中ほど、展開部の途中でチェロが低い変ホ音をテヌートで引きずりながら奏する箇所である。この音はピアノの鳴らす和音の最低音よりさらに低く、底辺の安定を保っている。しかしこれをヴァイオリンに移し替えると2オクターブ上になり、安定感を欠いてしまう。ヴァイオリンの調弦はチェロより1オクターブ上である事に加え、C線が無いからである。

このような場合、この変ホの音を無理してヴァイオリンに弾かせるのではなく、ピアノが代わりに弾いて和音を厚くしたほうが良いのではないか。一方ヴァイオリンは変ホ音ではなく開放弦で最低音のト音を弾けば多少は厚みを感じさせることができるのではないかと思う。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の第1楽章では、第2主題で独奏ヴァイオリンがG線の解放弦でオルゲルプンクトを奏する。上記のト音はこの響きを想起させる。もっと高い変ホ音を弾くよりずっと厚みのある響きになることだろう。

この二人の息の合ったデュオは今後もまた聴いてみたい。

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