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2013年2月17日 (日)

美術アーカイブ:2000年(2)  シュポール/シュルファス

「ポンピドゥー・コレクションによる シュポール/シュルファスの時代 ニース~パリ 絵画の革命 1966~1979」(東京都現代美術館)は、今図録などを見ていると興味深まってくるが、当時はあまり面白いと思わなかった。

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この時代、日本では「実験工房」や「ハイ・レッド・センター」の後世代、「もの派」が台頭し「サイケ」から「パンク」に至る混沌としていた頃だ。その同時代のフランスでの潮流を見ようというのだから、面白そうだと思うのが自然でる。

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それではなぜ印象が薄かったのだろうか?それはたぶんこの一派はコンセプト性が強く、展覧会開催の頃の私はコンセプチュアル・アートを嫌っていたので、それが主因のように思える。

例えば図録の表紙は♪ルイ・カーヌの「スタンプ」であるが、

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フランス語の「tampon」が「スタンプ台」と「スタンプ」の両方の意味を持っていることを利用し、tamponをtamponに叩きつける反復作業・・・というような理屈をこねている。現在の私なら、コンセプトへの許容度が増し、ある種のジョークとして作品に添えられている程度に受け止めているが、当時はただ「つまらない」と思った。

チラシの表紙には3つの作品が紹介されていた。

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左は♪ピエール・ビュラグリオの「窓」。これはマルセル・デュシャンの「フレッシュ・ウイドゥ」にそっくりだ。ゴミ集積場から拾い「かつての使用の痕跡」などについて説明が加えられているが、デュシャンの「レディメイド」のコンセプトを翻案した程度にしか思えない。

中は♪アンドレ=ピエールアルナルの「青と赤の大きな三角」。幾何学的抽象ならジョセフ・アルバースなどがもっと昔に活躍した。今頃やってもただの亜流という感じ。「布を折り込む」という動作についてコンセプトが述べられていたが、ピンとこなかった。

右は♪ダニエル・ドゥズーズの「薄く着色した木のロール」だ。薄く切った木をホッチキスで止めて格子状の構成を作ったというが、それがどうしたという感じ。

チラシの裏面にも6つの作品が並んでいる。

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左上は♪フランソア・ルーアンの「無題」。「絵画を分解し、再び組み立てて提示する」というコンセプトが添えられている。この作品はコンセプトは気に入らないが、観て美しい。

上右は♪クリスチャン・ジャッカールの「13の道具を収めた青い箱」の内外に見えるのは道具ではなく結ばれた紐だ。結ぶという習熟性を放棄するというようなコンセプトがあるようだが、面白くない。ただし箱にいくつかのオブジェを忍ばせるのはマルセル・デュシャンの「トランクの中の箱」のように、おもちゃ箱的な楽しみを醸し出すから良いと思う。

中左は♪クロード・ヴィアラの「綱」。インドの魔法のようなたたずまいだ。このような作品はアートとは何かというテーマを考える格好の材料となる。これと同じものを工事現場に置いたら、芸術作品だと思う人はいないだろう。ところが同じ物を美術館の一角に設置すると、たちまちアートに変身する。その境界線を探るのはまた面白い。

中右は図録表紙の作品と同じ作家♪ルイ・カーヌの「切り抜かれたカンヴァス」。画布が壁面だけでなく床にまで進出している。まあしかしそれだけの事に見える。

下左は♪マルク・ドゥバドの「ナンバーⅡ」だが、モンドリアンの模倣にしか見えない。

下右♪はベルナール・パジェスの「マンホールの蓋」はマンホールの蓋と石の山を用いて二元性と対照性を表現していると言う。すなわち:
形態:マンホール「幾何学性」←→石「混沌」
素材:マンホール「鉄」←→石「石」
仕上げ:マンホール「工業生産的」←→石「自然」
といった具合である。
このコンセプトは私にとって比較的受容しやすかった。

このように行った当時は必ずしも満足した展覧会ではなかったが、図録の補遺が作られたり、

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図録とは別に解説リーフレットが作られたり、

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サービスが良く、なかなか充実した展覧会だった。そのお蔭で「シュポール/シュルファス」という運動についての理解が深まり、いまこうして回顧することもできる。学芸員の努力は大変なものであったろうと拝察する。

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