夢の世界:狂気の山脈?
変な夢を見た。
親しくなった画廊主M氏が取引先に行くので一緒に行きませんか、と誘ってくれた。M氏の運転する車の助手席に乗って藤沢を出発し、国道1号線を小田原方面(西の方向)へ向かった。
途中でM氏が「混んでいるので違うコースで行きましょう」と左折した。南の方角へ向いたわけだ。私は海岸の国道134号線に出るつもりかな、と思った。
ところが道路と周囲の景観がどうもおかしい。行けども行けども信号も交差点も無く、ひたすら一本道を走っている。道路の幅はさほど広くないのだが、後にも先にも車の姿が無くM氏は百数十キロの猛スピードで飛ばしている。
そのうち道の左前方に山並みが見えてきた。それも雪を抱いた巨大な連峰だ。私の自宅から車で30分もかからない場所で、こんな威容が拝めるなんてあり得ない話なのだが、なぜか夢だと気が付かない。
そのうちカッパドキアのような奇岩群が現れた。大きな山脈の景色と相まって、威圧感をもって私に迫ってきたように見えた。まるでH.P.ラヴクラフトの傑作中編「狂気の山脈にて」で描かれた景色のようだった。
すると前方に住宅地が現れ、そこでは道幅が狭くなり、子供たちが道路の真ん中で遊んでいたのが見えた。危ない!と思ったらM氏が急ブレーキをかけ、事故には至らなかった。不思議だったのは、その時逆加速度による圧迫感がまるでなかった事だ。
遊ぶ子供たちを避けながら徐行して住宅街を進むと、間もなくIT企業とおぼしき会社のビルに近づき、M氏はその駐車場に車を止めた。青い壁面に赤地で会社名が書いてあったのだが、その名称はなぜか読み取れない言葉だった。
玄関を入って驚いた。中は普通の民家で、洗濯物、食事の後の汚れた皿など、生活感に満ち溢れていたのだ。そこには何人かの人がいたが、M氏は取引の相手らしい一人と商談を始めた。
私は庭に出ると面白いものが観れると聞いて、裏門から外に出た。すると目の前には巨大な雪の壁が立ちふさがっていた。垂直ではなく、多少角度がついていたので、腰まで雪に埋もれながらもその壁をよじ登って行った。
そして壁の一番上までたどり着き、前方を見たら海が広がっていた。夕焼け空と奇妙な形の雲で、その景色は誠に異様であったが、不思議な感動を覚えた。
すると突然、周囲の雪が解けて下方へ落ちてゆき、むき出しの壁が現れた。私はその上の縁にぶら下がった格好になり、足場が無くなって不安になった。壁の向こうは地面まで何十メートルもあるような絶壁である。手前はその会社の庭だが、10メートルくらいあるので、飛び降りてもケガをしそうで怖かった。
すると左のほうにまだ雪が残っていることに気が付き、移動して最初によじ登ったのと同じように、逆に下に降りて行って事なきを得た。
そうこうするうちにM氏は商談を終えたので、帰るという。私はなぜかM氏の車に乗るのを辞退し、自転車で帰宅すると言った。不思議なことに私の自転車が置いてあったのだ。
自転車で門の外に出ると、来た時とはまるで違う景観になっていた。目の前にはすりばち状の盆地みたいなものが広がっており、まずはカーブしながら下の方へおりてゆかなければならなかった。下りなので自転車は楽だ。スピードを出しておりて行ったら、なぜか後ろに愛犬「哲学者」が付いてきている。
哲学者はもう老犬なので、足腰が弱っており、あまり私が速く走ると可哀想だと思い始めた。すると急にあたりが明るくなり、まぶしいぐらいになった。それは少し開けたカーテンから私の寝室に差し込む朝の陽ざしであった・・・。
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人の見た夢の話というのは
たいてい退屈なものですが
これは凄い。
ジョヴァン二さんもMさんも哲学者も知ってる私には
迫真の描写です。
投稿: テツ | 2012年12月17日 (月) 21時13分
テツさん、コメントありがとうございました。
一番不思議だったのは、M氏の取引先になぜ「哲学者」が来ていたという点。これはさすがに夢の中でも「あれっ?」と思いました。
投稿: ジョヴァンニ | 2012年12月17日 (月) 23時20分