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2012年12月 5日 (水)

美術アーカイブ:1998年(9)現代アメリカ版画の40年

「現代アメリカ版画の40年 巨匠たちと版画工房ULAE」(セゾン美術館)はいいところに目を付けたな、という展覧会だった。

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会場にはそうそうたる作家の版画作品が展示されていた:

♪ジム・ダイン:半券に「オペラのハート」が採用された。大好きなアーティスト。
♪サム・フランシス:大好きなアーティスト。
♪ジャスパー・ジョーンズ:巨匠
♪ロバート・マザウェル:大好きなアーティスト。マザウェルの作品によるクリスマスカードのセットを購入したことがある。
♪ロバート・ラウシェンバーグ:大好きなアーティスト。いつぞやニューヨークのソーホー地区でラウシェンバーグの少し大きめの版画が400ドル程度で売られていたことがあった。買おうかどうしようか迷い、結局見送った。あの時買っておけばなあ・・・。
♪バーネット・ニューマン:既に高名。
♪マリソル:特異な彫刻が面白いが、版画もなかなか良かった。
♪ソウル・スタインバーグ:既に高名。
♪R・バックミンスター・フラー:版画も手掛けたのか。
その他にも、30名近くの作家の作品があった。

「ULAE」とは何か。この展覧会を観るまで知らなかった。既知の方には恐縮だが、おさらいを兼ねて概要をまとめておきたい。

1957年にロシア系移民タチアナ・グロスマンとその夫モーリスによってニューヨークのロングアイランド、ウェスト・アイスリップに設立された版画工房。

モーリスは画家だが心臓病を患っていた。妻タチアナは家計を支えるために版画工房の開設を考案する。自分たちは版画制作の技術を持っていなかったので、助っ人として版画印刷の技術者ロバート・ブラックバーンを呼び寄せ、版画の制作を開始する。

注目に値するのは、工房を単なる「刷り工場」ではなく、版画に疎いアーティストを招待し、育成する場として機能するように方向づけた点だ。そのためにタチアナは次のような仕掛けを施したという:

♪一度に1人しか招待しない。
♪くつろいだ雰囲気にする。
♪アーティストに版画技術の手ほどきをする。
♪アーティストを温かく見守り、アーティスト本人の創作意欲を引き出す。
♪版画印刷のための紙を厳選する。
♪アーティストと詩人によるコラボレーションを企画し、アートと文学の融合を図る。

以上の努力の結果、ULAEはアメリカを代表する版画作家、ジャスパー・ジョーンズとロバート・ラウシェンバーグの育成という大仕事を成し遂げる。

一人の移民の主婦(タチアナ)の力恐るべし、である。

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