藤沢の2画廊と展示作品の相互作用
「vol.4 RAF かぜがたねを はこぶとき」(ギャラリーCN、ジネタ:いずれも藤沢)の一環としての「~暗くなるまで待って~ NIGHT TOUR」に参加した。
最初「RAF」と聞いた時、私は「裸婦」と勘違いした。おっこれはいいぞ、美しい裸婦像に特化した展覧会が2つの画廊で開催されるのか、と早合点したのだ(中年男性志向で失礼)。
しかしRAFとは「Round Art Fujisawa」の略語であった。藤沢にある複数の画廊(今回は2カ所)で展覧会を同時開催し、地元のアート気運を盛り上げるというような目的があったのだと思う。
そしてそのメインイベント「ナイトツアー」は営業時間終了後の2つの画廊を画廊主のガイド付きで巡り、ワインを傾け作家と交流を図りながら作品を鑑賞するという、何ともぜいたくな催しだった。こんな機会はあまり多くないと思い、私は他の予定を早めに切り上げて駆け付けた。
このイベントで2つの画廊における2つの展覧会を観て、私は作品とそれが展示される場との係り合い・相性という事について考えさせられた。(今回はどちらの展覧会も画廊側が主導であったようだが、作家主導もあり得ることだと思った。)
音楽に例えると、音響と雰囲気の良いサロンを備えた邸宅があったとする。その主人が「うちのサロンでこんなコンサートが出来たらいいな」とイメージし、それを作曲家と演奏家に投げかける。賛同した作曲家はそのサロンに相応しい曲を創作し、演奏家はその曲をそこで演奏する。そんな具合だ。
上記の音楽の例におけるサロンを画廊、作曲家と演奏家をアート作家に置き換えると、今回の企画にあてはまるような気がしたのだ。
最初に行った♪ギャラリーCNでは先日観た「内田 望展 いのちのかたち」が続行中だった。
そして今回は、前回展示されていなかった龍の像が登場した。それは同ギャラリーのシンボルともいえる湾曲した鉄板の衝立の前に鎮座していた。
この龍の像は台湾からの委嘱により短期間で制作したものだそうだ。「鍛金」の技法で作られた金属の龍は、同じく金属で作られた衝立との相性が抜群であった。
もう一つの作品。これは昆虫をイメージした架空の生物だが、これは背後のコンクリートの壁とよくマッチしていた。
コンクリートの壁という無味乾燥の無機物を背景に、生々しい巨大生物という有機物がある。それらの対比、あるいは足して2で割ると平衡を得るバランス、そういった感じが作品の力を倍加させているようだ。
案内はがきに採用された鯨の像も楽しい作品だった。鯨に飲んでもらおうとしている酒は、もちろん「酔鯨」。
一方、次に行った♪ジネタでは「石井 誠展 SOMETHING INVISIBLE」が開催されていた。
この画廊の特色は大胆に突き出た梁(はり)と白壁を有する室内空間だ。そこに石井は等身大に近い人物彫刻を設置し、天井からは彩色した多数のマラカスを吊り下げ、さらに壁面には抽象映像を投影した。
この映像は来場者が踏み鳴らす靴音などに反応し、色と形を変化させるという仕掛けがあった。
さらに石井自らが作曲したBGMも流れていたういた。また作品のタイトルにも凝った表現がみられた。
この個展は、立体(彫刻)、平面(レリーフ)、映像(壁面投影)、文学(作品タイトル)、音楽(BGM)をすべて石井自身が手掛け、「総合芸術」となっていたことは注目に値する。そしてそれを可能にしたのは、ジネタという画廊の室内空間であった。
以上の2つの画廊のように、アート作品が身を寄せる場は非常に重要である。場の持つ潜在力により、作品は活き活きし、従って価値も増大する。有意義なナイトツアーであった。
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投稿: 百年の孤独 | 2025年5月 7日 (水) 20時39分