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2012年8月 1日 (水)

美術アーカイブ:1994年(1)日本画の抽象

「日本画の抽象-その日本的特質」(O美術館:大崎)は素晴らしい展覧会だった。

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私が生まれて今日までに展覧会に足を運んだ回数は、小規模な個展も含めると、なんと千回を超えていた!その膨大な記憶の中で、最も印象深く、かつ楽しんだ展覧会のランキングを作ったとしたら、この展覧会は間違えなくトップ10に入る。いや、もしかすると最高位になるかもしれない。

この展覧会に関しては、昨年2月に観た「日本画の前衛」(東京国立近代美術館)の記事で両者を比較しながら論じた。私としてはその記事で、この「日本画の抽象」展についても書きたい事を書いたのでそれ以上大幅に付けたしてもあまり意味がないと思った。そこでその記事の内容を再掲することにした。

しかし、記事の対象とする展覧会が逆なので、ただコピーするのではなく、今回の「日本画の抽象」を主体とした書き方に改めた。また若干ではあるが、新しい内容も書き添えた。

今回の展覧会は上記のとおり17年後の「日本画の前衛」展と補完関係をなしている。2つの展覧会は「車の両輪」のような関係にあると言っても良いかもしれない。

今回の「日本画の抽象」展(便宜上以下「抽象展」と呼ぶ)は、このような企画において先駆的な展覧会だった。

抽象作品に特化した関係上、アヴァンギャルドな具象作品が対象外となったのでモダニズム運動の全貌と流れを捉えるには不向きな展覧会だった。しかし日本画として制作された抽象画の佳品を多数展示していたので、その新鮮な印象は今でも記憶に新しいものがある。

また日本画と西洋画がテーマ・描き方などでクロスオーバーな関係となってきたため、両者はもはや素材でしか区別できなくなっていた事を再認識させられたのもこの「抽象展」だった。岩絵具を使うのが日本画、油絵具を使うのが西洋画というわけだ。

一方、17年後の「日本画の前衛」(便宜上、以下「前衛展」と呼ぶ)は抽象だけでなく、シュールレアリスム等を含めた広い意味での前衛芸術を対象としていたので、広がりがあった。また学芸員さんたちの苦労に裏打ちされたのであろう、前衛運動の流れが把握しやすい企画になっていた。

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「抽象展」、「前衛展」でどのような作家が取り上げられたかをまとめてみた(各分類で作家名五十音順)

♪分類A:両方の展覧会で取り上げられ同じ作品が展示された作家2名と作品
岩橋英遠「都無ぢ」、山崎隆「象」、「神仙」

♪分類B: 両方の展覧会で取り上げられたが異なる作品が展示された作家5名
船田玉樹、三上誠、下村良之介、星野眞吾、不動茂弥

♪分類C:「抽象展」だけで取り上げられた作家22名
朝倉摂、岩崎鐸、岩澤重夫、岩田重義、上田臥牛、大野俶嵩、楠田信吾、久保田壱重郎、児玉希望、榊健、佐藤多持、塩原友子、杉山寧、堂本印象、堂本元次、中島清之、名合孝之、野村耕、野村久之、水谷勇夫、山本知克、湯田寛

♪分類D:「前衛展」だけで取り上げられた作家15名
靉光、小野里利信(オノサト・トシノブ)、北脇昇、小牧源太郎、田口壮、西垣籌一、長谷川三郎、福田豊四郎、堀尾実、丸木位里、村井正誠、八木虚平(一夫)、山岡良文、山本正年、吉岡堅二

なお「抽象展」が充実していたのは、一昨年惜しくも84歳で他界したあの針生一郎が元気な頃に参画していたからに違いない。図録も針生と天野一夫が解説を書いており誠に贅沢な内容だ。この2つの解説により日本画における抽象の流れを捉えることができる。

しかし展示作品があまりにも素晴らしいので、作品を1点1点驚きの眼で鑑賞したため、逆にトレンドを把握することはできなかった。

これに対して「前衛展」は展示作品のインパクトは「抽象展」に及ばなかったが、展示の工夫によりトレンドを把握しやすかった。展示作品も良いが、芳名録など資料的価値のある展示物がそれを助長していた。

なお「前衛展」ではオノサト・トシノブと八木一夫の名前の表記を変える前の時代の作品が展示されており、興味深かった。

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