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2012年7月30日 (月)

美術アーカイブ:1993年(2)パウル・クレーの芸術

「パウル・クレーの芸術」(Bunkamuraザ・ミュージアム)は、日本で開催されたクレーの個展中、最大規模であった。その図録は厚さが3センチもあり、ずしりと重い。

1993_001

4年前に伊勢丹美術館で開催された展覧会同様、この図録にもクレーの孫アレクサンダー・クレーがメッセージを寄せていた。その中でアレクサンダーは「クレーの素描的な作品を日本の線画と関係づけたり比較しようとすることは、私個人としては何か不自然なことのように思えます」と述べている。

日本のファンに安易な迎合をせず、自分の考えをしっかり抱いて発言することに好感を持った。そしてアレクサンダーは安直な結び付けを戒めながらも、クレーの作品と日本の書の「集中性」や「一回性」における類似を示唆してもいるのである。日本への配慮も忘れないバランスの良さと言えよう。

ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館(デュッセルドルフ)の初代館長ヴェルナー・シュマーレンバッハは「クレーとピカソ」という珍しいテーマの論説を寄せている。出会いが無く作風も異なる二人の巨匠を並べて論じるとは困難な課題だ。このテーマ設定自体に無理がある気がするが、シュマーレンバッハは豊富なデータと少々強引だが明快な切り口で迫ってゆく。アートをめぐる理論的側面を掘り下げてゆくにはどうしたら良いかという問いに対する優れた例解となることだろう。

膨大な展示点数にはもちろん満足した。私の敬愛する作品も、数多く展示されていた。図録をめくりながら、目についた作品名を拾ってみよう:
♪回想譜(ゲデンクブラットの室内)
♪居住者のいる部屋の透視図
♪夕景の分解
♪肥沃な国の境界に立つ記念碑
♪遠心力
♪忘れっぽい天使

このような素晴らしい展覧会を観る機会を得て本当に良かった。

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コメント

クレーは好き。
クレーの食卓?いやそれを言うなら、コクトーか?
図書館の書架にその類あり、いつか読もうと・・・
勉強会したいな。。。

勉強会という言葉は魅力的に響きますねえ。でも私の場合、現状では「勉強会」は単なる飲み会と同義語です。(苦笑)この悪い癖を是正し、真摯に
勉強に取り組む習慣を付けたいですが、ぬるま湯体質は簡単には改善できないでしょうね。

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