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2012年5月 3日 (木)

国展:彫刻

「第86回 国展」(国立新美術館)に行った。妻ジョアンナ(仮名)も一緒だった。この連休中、妻と一緒に展覧会に行くのは3回目となった。妻はいつも演奏の仕事で忙しいので、こういう事は珍しい。

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国展といえば岩崎幸之助の彫刻、というのが私のキャッチフレーズだ。今回も楽しい作品を披露してくれるだろうと期待していた。実際その通り立派な作品「水太鼓石-ワークショップ」という大作を拝むことが出来た。しかし、あいにくの雨で水太鼓を叩いても音が出ない。いつもならここでゲンダイオンガクを味わうことが出来たのに残念だった。

岩崎ファンである私は、会場に到着すると、まず彫刻部を観に行く。まだ元気なうちに作品のオーラを吸収しようという意図である。国展は展示点数が大変多いので、最後のほうになると疲れにより集中しにくくなる。そんな状態でお目当ての作品を観たくないから、鑑賞のスケジューリングを立てて臨むのだ。

そのため、今回の記事は絵画などより彫刻に力点が置かれた形になった。彫刻部において岩崎幸之助以外に、特に印象に残った作家と作品を列挙してみよう(作家名の五十音順):

♪河原 圭佑「歴史の扉」
少しずつずれた正方形状の石が重なりあっている。表面には複雑な紋様が刻まれている。全体を一目見ただけでは単純な構成だ。しかし微妙なバランスにより、ずっしり構えている中に微かな振動があるかのように見える。

♪こじまマオ「頭脳の変換」
私はホラー小説や奇妙な味の小説が大好きだ。しかし文学のホラーを映画や彫刻に視覚化してしまうと、どぎつさが強調され興ざめになる事が多い。
この作品は、作家の技量が高いためであろうか、出来栄えの良さによりギリギリのところで芸術作品としての品格を保っているように思える。同じテーマを技術力が劣る作家が手がけたら、たぶん下劣な作品になってしまうだろう。作家の技能に感服。

♪柴山 京子「果実」
四角いフレームの中に3つの突起が付けられている。それらは滑らかな曲線を描き、有機体のような印象を与える。そして全体の構成感もある。ここでフォルムとコンポジションという、平面の二大要素を思い出す。例えばピカソはフォルムに優れたがコンポジションに弱かった。モンドリアンはコンポジションだけでフォルムが無かった。それに対し、柴山のこの作品は二大要素を共に備えている。

♪高田 治「YES」
黒光りする石柱がダイナミックに反り返っている。その縁には細かい凹凸が付けられ、荒々しさが感じられる。しかし全体としてはバランスが良く、堂々と起立している。「F氏特別賞」受賞作だが、F氏とは誰のことなのだろうか?

♪長崎 陸征「歩み」
この作家はテーブルの上を賑わすオブジェたちの愉しさが特徴だと思う。置かれた物には珍しい物は無い。しかし食事・仕事など異なる生活シーンに使われるグッズを一緒に並べることにより、特異さを生み出している。そのさりげなさが素晴らしい。

♪西脇 弘「birth」
ジョアンナがこの作品を観るなり「よく落ちない」と叫んだ。
先がすぼまったボトル状の柱の上に球体が載っている。その不安定さが面白い作品だ。黒いのでこれは黒御影石かな。削るのが固い御影石をなめらかな球体に削りあげるのは大変な作業であっただろう。

♪長谷川 利幸「タガとクサビ・岩山のカケラ」
四角い岩のカケラをベルトで束ねただけの作品だ。しかしその単純さとは裏腹に、全体として魅力溢れるオブジェになっている。以前長谷川の「次元を束ねる」という作品を観た。この作家は「束ねる」ことが好きなようだ。

♪原 透「特異点のある石」
まず作品名が気に入った。私は数学が大好きなので(出来るわけではないが)数学用語にはロマンを感じてしまう。そして作品の出来栄えが、名前負けしていないところが素晴らしいと思った。以前観た原の作品「時間旅行者のために」と比べると、よりシンプルなたたずまいになっている。それがまた良いと思った。

♪藤川 健「生命の断片 No.29」
以前観た同名で番号のみ異なる作品「生命の断片 No.14」は平面的で床(地面)に置かれて上から観る作品だった。今回の作品は縦形で、形状もシンプルである。その単純なたたずまいが、以外と温かい詩情を醸し出すのだから不思議である。

♪三島 喜一「ちきゅうのたまご –OOFUKUMAME-」
そら豆を大きくしたようなオブジェが多数散乱している。タイトルからこれらを卵としてイメージすると、ブランクーシの「世界のはじまり」を思い起させる。一つ一つのオブジェの表面はきれいに磨かれ、素材(樹木?)を感じさせない。高い技術にユーモアのセンスが加わった作品だ。

♪宮城 利昌「刻」
台座の上に載せられた黒い菱形の石。それだけのシンプルな形状を、刻んだ線など多様な形が覆っている。一般に「抽象彫刻」というと、このような形の作品が多いが、単純ではなく渋さと奥行き感がある。

♪矢野 道彦「双極」
一本の丸太を削り、片方の端は原形に近い円形、反対側は雫の形に削られている。その間は表面が徐々に移ろってゆく。まず「双極」という響きが気に入り、単純だが完成度の高い出来栄えに感じ入った。樹木の肌触りという有機的側面と、計算された幾何学的形状という人工的側面の調和が取れた作品だと思う。

♪吉村 壽夫「集積-(N)’12-Ⅰ」
金属のフレームの中に木材が積まれている。中央にはスライスされた赤い玉がある。金属という無機体と木材という有機物が出会い、不思議な調和を見せている。これは楽しい作品だ。若い作家の意欲作というたたずまいを感じるが、実はベテラン作家というところも意外性がある。

♪渡辺 忍「閑寂の中から」
貢物か何か大事な物を風呂敷で包んだ感じの作品である。これが何と石で出来ている。布の折れ曲がったしわなど、質感をよく出せるものだなあと感心した。この作家は「包む」という作品がシリーズ化しているのだろうか。
クリストのように本当に包んでしまうのではなく、包んだ感じを石で表現するというのは、今後一つのジャンルに発展するかもしれない。楽しみだ。

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