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2012年5月22日 (火)

中島尚子展

「中島尚子展」(ギャラリーCN:藤沢)に行った。「たからづくし」というサブタイトルが付けられていた。

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事前に認識していなかったのだが、この展覧会は木口木版の作品展だった。これまで木口木版というと、まず柄澤齊(からさわひとし)を思い浮かべた。2006年に神奈川県立近代美術館 鎌倉で観た個展の衝撃があまりにも大きかったので、木口木版というと柄澤がパイオニアで他の作家はフォロアーというイメージをどうしても持ってしまう。柄澤の存在で、新規参入難しいジャンルになっていると思うのだが、実態はどうなのだろうか。

しかし今回の展覧会では、作家の中島尚子は若手作家でありながら個性と味のある作品を生み出していた。仮に柄澤の呪縛というものがあったと仮定しても、それを解いて彼女自身の世界を創っていたように思えた。

柄澤のような作品が観たいとうムキには、中島も海月を描いた緻密な作品を用意していた。「こういうのがいいと言うなら私でも出来ます」という感じだ。

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そしてそれとは趣が異なる作品もあった。五十音をテーマとし、あ、い、う・・・それぞれの文字で始まる名前の物を一つづつ彫り上げた作品群だ。例えば「ほ」は「ほねがい」。写実が見事だ。

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作家は、いろは歌留多のように名称・事物を規定することで、自分自身に制約を課した。そしてそれは(逆説的ではあるが)創作意欲を増すトリガーになるという。アーティストの仕事の原動力にもいろいろあると考えさせられた。

一方「蔵書票」は依頼者の希望に沿って、オーダーメイドをするとのことだ。

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昨今メールなどの電子データが書籍などの紙媒体を駆逐してゆく傾向にある。そのようなトレンドの中で、時代に逆行するように「蔵書票」という紙ベースのクリエーションをするのは勇気がいることだろう。このような大きさなら世界に一種類しかない「一筆箋」もできそうだと思った。

また、ほのぼのとした童話調の作品シリーズも展示されていた。これらは「脱力系」の作品として、気楽に観ることができた。真剣勝負のシリアスな作品から、このような癒し系の作品までのラインナップに接すると、作家の懐の広さがうかがえて興味深い。

そして今回の展覧会のポイントの一つ、版木の展示について触れておこう。

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作家は作品制作に使った版木を並べて展示していた。これだけの版木が揃うと壮観であるとともに、構成とリズムまで感じられる。完成した版画に負けないくらい、これらも「作品」であった。

木口木版の奥行を広げた中島尚子の今後の活躍が楽しみだ。

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