« 美術アーカイブ:1981年(7)ドラン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(9) クリムト展 »

2012年3月 4日 (日)

美術アーカイブ:1981年(8)アングル展

「アングル展」(国立西洋美術館)もドラン展同様、日本における初めての本格的な回顧展だった。

__15

読売新聞夕刊のコラムには、このこと(日本でのアングル展開催が初めてであるという事)に関し、日仏双方の立場からの興味深いコメントが紹介されていた。

__16

まずは日本の側から。コラムを執筆した読売新聞の記者♪村瀬雅夫は:
「日本の正当ぎらい、判官びいきの趣好もあって、明治以来、西欧絵画の紹介は、反アカデミーのバルビゾン派や印象派といった新潮流に比重が置かれ、時の本流は悪玉にされて積極的に紹介されてこなかったようだ。」とうコメントした。

これに対して画家の♪大久保泰は:
「アングルをすかして見ると、その下にはラファエルロなどルネッサンスが見えるし、さらにギリシャ・ローマの古典がある。西欧美術がたどりついた最後の牙城といった感じがして、日本人には歯が立たない。アングルに取り組んだら一生それで終りそう。それでは現代画家として絵が描けない。」と続ける。

一方ルーブルの美術史家♪ジャック・マーカールは:
「19,20世紀のフランス美術に関して鋭敏に反応する美術愛好国・日本で、アングルの展覧会が一度も開かれたことがなく、美術館に一点のアングルもないのは不思議だ」という皮肉たっぷりのコメントだ。

大きいコラムなので画像を2つに分けたが、後半にはアングルに対する賛否両論が紹介されている。

__17

アングルの師匠♪ダヴィッドはアングルの出世作・ナポレオンの肖像や「オダリスク」に対し「奇妙で時代錯誤」とか「背骨が長くて解剖学的に不正確」という批判を浴びせた。

アングル没後になると、♪セザンヌが「二流画家だ」と言う一方で、♪ドガは「神様」だと正反対の評価をする。賛美者の一人♪ゴーギャンは「アングルはヨーロッパ絵画の革命家だった」と持ち上げたのだ。

私はセザンヌが大好きなのだが、セザンヌが評価しないアングルの「泉」も捨てがたい魅力があると思っている。また「ヴィーナス・アナディオメネ」のための習作は素晴らしいと思う。

__21

「トリニタ・デイ・モンティの広場」はとても味わい深い風景画だし。

__19

こうした混乱のなかで朝日新聞夕刊のコラムには別の面白いことが書かれていた。

__22

♪ボードレールは次のような指摘をした:
「アングルは、『目に見ることも手で触ることもできる非日常的な別の世界』をそこに現出させた画家であったかもしれない」。
もしかすると、このあたりがアングルに対する公平で正当な評価なのではあるまいか。

« 美術アーカイブ:1981年(7)ドラン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(9) クリムト展 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/163862/44364541

この記事へのトラックバック一覧です: 美術アーカイブ:1981年(8)アングル展:

« 美術アーカイブ:1981年(7)ドラン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(9) クリムト展 »

最近のトラックバック