« 美術アーカイブ:1981年(10)国吉康雄/ベン・シャーン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(12)アンディ・ウォーホル展 »

2012年3月 8日 (木)

美術アーカイブ:1981年(11)モーリス・ドニ展

「モーリス・ドニ展」(国立西洋美術館)で私はまた絵画の新たな世界を知った。それは私の言葉でいうと「構成感を味わえる装飾性」ということだ。パンフレットの表紙には渋い「ペロス=ギレックのレガッタ」が採用された。

_

この作品一つとっても、海面が様式的に描かれ、船の帆が平面的に塗られ、写実から脱した独特の世界を味わうことができる。そして画面には人や船が多数描かれており、それらが一見バラバラに配置されているようなのだが、妙な構成感がある。これがドニの世界なのか。

同じく裏表紙に採用された「董の花束のある裸婦」を観てみよう。

__

これは非日常的な風景だ。屋敷の正門から玄関に通じているであろう曲がりくねった小径の脇に裸婦が横座りし、こちらを正視している。こんな光景が実際にあるはずがない。これはアトリエで描いた裸婦と庭園とのモンタージュであろう。そして裸婦の姿も俗界とは異なる様相を呈している。そのような絵画だが、全体として何とも言えない魅力を放っている。

チラシの中扉には「四月」が紹介されていた。

___2

ここまで来ると、人物は風景の中に溶融し、風景の一部と化している。当時このような絵は前衛絵画であったろう。

購入した絵葉書の中に「緑の樹のある風景」があった。

__2

この並んだ樹木が生み出す音楽的なリズムは、機械的ではなく、有機的だ。しかしその一方で幾何学的な構成が背後に隠されているようにも見える。心地よい世界がここにもある。

同じく絵葉書の「選ばれし乙女」(楽譜表紙)。

__3

洒落てるなあ。こんな絵が表紙にあったら、中味を検分せずに楽譜を買ってしまいそうだ。渋い色を使いながら、上品で豊かな感じが表現されているのはすごいと思った。

そして半券。これは「小川のほとりの女たち」だ。

__4

この川は蛇か縄のようだ。川を泳ぐ白鳥(と思われる)は川と一体化している。女たちのしなやかな曲線は川と唱和している。人間も動植物も樹木も川も、みな溶け合って全体のデザインを構成している。流れるような線は無造作に描かれたようでいて、微妙なバランスを保ち、上品さも損なっていない。

モーリス・ドニは素晴らしい画家だったのだ。再認識した。

« 美術アーカイブ:1981年(10)国吉康雄/ベン・シャーン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(12)アンディ・ウォーホル展 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/163862/44419071

この記事へのトラックバック一覧です: 美術アーカイブ:1981年(11)モーリス・ドニ展:

« 美術アーカイブ:1981年(10)国吉康雄/ベン・シャーン展 | トップページ | 美術アーカイブ:1981年(12)アンディ・ウォーホル展 »

最近のトラックバック