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2012年2月18日 (土)

Viewpoints いま「描く」ということ」

「あざみ野のコンテンポラリー vol.2 Viewpoints いま「描く」ということ」(横浜市民ギャラリーあざみ野)に行った。

Viewpoints_

この展覧会に行ったきっかけは、中年とオブジェさんの記事だ。これは面白そうだと思って早速足を運び、期待通りの成果を得た。

♪淺井裕介
バラエティに富んだ素材を使い分けて様々な作品が産み出されていた。まるで「素材の百貨店」のようであった。

会場に入ると「文字卵」が出迎えてくれた。この作品は展示用カッティングシートより本展覧会のテーマ「Viewpoints」の文字を切り取り、並べ替えて貼り付けたそうだ。

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「標本・オオカミ」は紙にペンで描いたほか、マスキングテープを多用している。一般的なテープの素材感とは異なる独特の味わいが出ていて興味深かった。

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「八百万の神々」のシリーズは陶器、土、マスキングテープという素材のミックスで制作されている。

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他に泥絵など、様々な素材の個性を活かした作品群は、色彩が地味なのに華やかで楽しかった。

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♪椛田ちひろ
「事象の地平線」・「すべてが漂っているそれ自身の放浪の海」の展示室に入った瞬間、異界の雰囲気を感じた。いくつもの暗い楕円が部屋全体をぐるっと取り囲み、天井から湾曲したオブジェが一つ吊り下げられている。マーク・ロスコのチャペルのようなたたずまいがそこにあった。

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吊られたオブジェの前面は黒鉛により真っ黒に塗られているが、その裏側は鏡になっている。横から観ると壁面の楕円も一緒に映り、それらの交錯がシンプルな構成に変化を与えている。

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そして反対側に回ると、凸面鏡の効果でそれを観ている私が細くなって映り込み、さらに複雑な造形が生まれている。

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壁面の楕円は一見、太めの破毛で塗ったように見えたが、実は油性ボールペンを使ったという。この面積をボールペンで塗りつぶすとは大変な労力だ。作家自身によると、ひとつの展示で500本ものボールペンを消費し、描いているときはインクのにおいでくらくらしたそうだ。

しかしこの展示の静寂からは、その背後にある労働性は全く感じられない。そのギャップに興味を感じるということは、この作品のコンセプチュアルな側面に触れたということになるだろうか。

♪桑久保徹
他の展覧会でも作品を観たことがあった。若手アーティストの中では知名度が高いほうだろう。

「私の子が一番かわいい」は今年描かれたばかりの作品。雛壇のような台の上に直立する人物群像。その上には無数の裸電球。実際にはあり得ない光景が妙な説得力を持って観る側に迫ってくる。

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「夜のうず」も今年の作品。「自分の中に架空の画家を見出す」というコンセプトを持っているそうだが、このうずはゴッホの「星月夜」を彷彿とさせる。そしてその「心象風景度」(私の造語)はゴッホよりもっと強い。

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描かれた「じゃがいものある風景」と実物のじゃがいもの対峙。この椅子が玉座のように、見えてきた。

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スケッチ帳も展示してあった。下書きだと思われるが、右上のほうには楕円の列が見える。これは椛田ちひろの作品であろう。会場にて、椛田の作品が展示された後描いたに違いない。まさに創作と展示の同時進行だ。

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展示室の反対側の隅には壺のシリーズが架けられていた。「金つぎ地図のある壺」「星の壺」「女と緑の壺」「帰宅の壺」という具合にユーモラスな名前が付けられている。描きこまれた人物に比べて壺が異様に巨大なのだが、不思議と違和感をおぼえない。

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床に落ちた絵の具まで抽象作品のように見えてきた。作家の力量によるイメージの肥大であろうか。

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♪吉田夏奈
小豆島に滞在し、同島をモデルに描いた作品が展示されていた。アーティスト・イン・レジデンスの一つの形と言えよう。

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「奇跡の牛」というタイトルが気になったが、同島を上空から見ると牛の形に似ていることから付けたということだ。

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平面作品はところどころを折り返し、四角錐状に組み上げられて立体作品のようになっていた。

このような形だと、ある面を観ている間は反対側の面を観ることができない。そのため、反対側に回り込む必要がある。鑑賞者が移動しながら作品を鑑賞するように促しているようにも解釈できる。

「空中散歩」は静かなたたずまいだ。よく考えたら、「奇跡の牛」もこの作品も飛行機などに乗らないと見ることができない風景だ。

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これらの作品は鳥瞰による風景をそのまま描いただけのように思えるが、不思議なムードが漂っている。押し付けがましくないのだが、風景が「私を観て下さいね」と懇願しているようなのだ。作家に描写力があるためであろうか。

この展覧会は行って良かった。中年とオブジェさん、ありがとうございました。

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