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2012年2月26日 (日)

美術アーカイブ:1980年(13)クレー展

「生誕100年記念 パウル・クレー展」(西武美術館)の特色は何だろう?

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それは図録が充実していたことだと思う。表紙に採用された「ライオンです、気をつけて!」も良いが、内容の掘り下げが良かった。

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♪クレーの息子のフェリックス・クレーは「パウル・クレー展によせて」というメッセージを送ってくれていた。その最後には「無題・死の天使」についての印象的な言葉があった。曰く「画家パウル・クレーは、この地上における生から暇乞いをしようと覚悟したのです」。いかにも肉親らしく、情感がこもったメッセージだ。

♪土肥美夫は「クレーの芸術とその造形理論」という小論を書いた。そこでは「方法の純粋培養の結果得られた視覚構造図」という魅力溢れる図が紹介されていた。

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♪大岡 信は「クレーの展覧会のために」という小文を寄せてくれた。美術に造詣が深い詩人らしく、示唆に富む文章が綴られていた。

♪クリスチャン・ゲールハールは「現代絵画と古典派の音楽―ひとつの平行関係」(千足伸行訳)という小論を寄せていた。そこでは「ヨハン・セバスチャン・バッハの三声部楽章の楽譜例をもとにした造形的な表現」などの魅力ある図版が紹介されていた。

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なおこの一節ではいくつか誤訳がある。「三声部」も「楽章」も正しい用語だが「三声部楽章」というのは音楽を語るにあたり通常用いる表現ではない。原文はたぶん「三声の楽曲の譜例」というような意味であろう。

また「音の高さを3音階の幅に相当する水平線によって表している」という表現も正しくない。原文はたぶん「3オクターブの幅」を意味しているのだろう。

「多声学(ポリフォニー)というのも異様である。ポリフォニーは「多声音楽」と訳すのが通例である。

せっかくの魅力あるテーマなのだから、できれば音楽に関する記述も正確であって欲しかった。辛口の感想になってしまったが、ポリフォニーを愛し、クレーの絵画と音楽の関係を考えてきた私としてはつい細かいところに目がいってしまった。

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