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2011年12月15日 (木)

美術アーカイブ:1980年(2) ブリジット・ライリー展

オプ・アートについては、この展覧会に先立つこと2年、「ヴィクトル・ヴァザルリ展」を観ていた。これに関しては「美術アーカイブ:1978年(1)ヴァザルリ展」として記事にまとめた。その際、原発を美化して描いたヴァザルリの立場について複雑な思いを残してしまった。

しかし当時はそんな事が起こることを知るよしもない。その2年後、ヴァザルリ展の記憶が冷めないうちに観た「視覚の眩惑 ブリジット・ライリー展」(東京国立近代美術館)でもオプ・アートの魅力を充分に堪能した。

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ライリーにとって初めての個展は1962年、30代になったばかりの頃だ。その頃から彼女は視覚の錯覚を利用した典型的なオプ・アートの作品を制作している。例えば1964年に描かれた「流れ」を観てみよう。

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ここには作品名の通り「流れ」がある。湾曲した縞模様が錯覚により動いて見え、それが海面の波の動きのように感じ取れるのだ。

錯覚を利用した作品には様々なヴァリエーションがある。例えば同年に描かれた「燃える」は白黒の三角形状の模様に濃度の差を付けることにより、炎がゆらぐような独特の動きを感じさせる作品だ。

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これらに先立つこと3年、模様の動きよりクイズ・パズル的な面白さを狙った作品が描かれている。「隠された四角形」だ。

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小さい四角形が集まって形作られた大きな四角形はすぐ認識できる。しかしこの作品の面白さはそれで終らない。じっと眺めていると、絵に奥行きが感じられてくる。そして床、壁、天井のすべてに模様が施された四角い部屋の中にいるような錯覚に陥る。まるで原美術館に常設されたジャン=ピエール・レイノーの『ゼロの空間』に入ったようだ。

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このようにブリジット・ライリーの作品には文字通り広がりと奥行きがある。形状や構成の変化もある。ユーモアのセンスも感じられる。私が芸術の必須要件とする「面白くて楽しい」という条件を完全にクリヤーしているのだ。楽しい展覧会だった。

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