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2011年11月 2日 (水)

ぐるーぷなーべ演奏会

2011年11月1日(火)
「第80回 ぐるーぷなーべ演奏会」(津田ホール)に行った。「小林秀雄 歌曲の世界」~傘寿を記念して~という副題が示すように、全曲 小林秀雄作曲の作品が演奏された。

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このコンサートには「選曲評論」をしてくれ、と言わんばかりの大仕掛けがあった。小林秀雄の代表作「落葉松」がプログラムから欠落していたのだ。もし開演前に選曲評論に取り掛かる時間があったら「代表作が含まれていなかった」と書いたことであろう。

しかしこのからくりは終演後に種明かしされた。アンコールとして小林秀雄本人のピアノと出演者全員による「落葉松」の斉唱が演じられたのだ。観客の疑心暗鬼を最後にすっきり晴らすという見事な演出だった。

では「曲順評論」は書けるだろうか。今回の演奏会では最後の2曲の個性が際立っていた。最後から2番目の「いけない」は前編セリフだらけで歌手(というより俳優)がコミカルな演技を続けるというユニークな曲だ。滑稽な内容の中にちょっぴりホラー的な部分も忍ばせてあり、作詞者(山中陽子)のセンスが感じられた。

また最後の「赤いハイビスカス」はそれまでの西洋風の調性音楽とはガラっと異なり、歌手は沖縄民謡の音階で歌い、ピアノはその音階に沿いつつもモダンな和声を鳴らすという作り方がなされていた。

それらの2曲だけに着目すると、今回のプログラムは野球に例えると直球を続けて最後にフォークボールを2球投げたという感じだ。これだけなら単調な配球に見えてしまう。

しかしこの演奏会はそれ以外にも配慮がなされていたようだ。例えば1曲目「シベリアン・アラベスク」はピアノが近代的な和声を示して新鮮だった。同じく野球に例えると「1球目いきなりフォーク」という印象だ。

また9曲目の「花の春告鳥」はドーリア調が主体で、これも他の普通の調性音楽と比べると和声的な個性があった。プログラムの真ん中寄りに配置されていたので「直球を1,2球投げた後3,4球目にカーブを混ぜる」という配球に近いかと思った。

以上のような組み立てを見て、このプログラムは曲順がよく練られていたと思った。

演奏のことはわからない。特に声楽に関して私は何も知らないので、もどかしいが具体的な感想が書けない。林紀子の演奏に安定感が感じられたことと、ピアニスト(山岸茂人、山口佳代)の曲と歌手に合わせた弾き分けに恐れ入ったことを記しておこう。最後に一言、小林秀雄さんのピアノは自作の曲とはいえ80歳と思えない素晴らしい演奏でしたよ

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