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2011年11月21日 (月)

第15回 アラベスク コンサート

2011年11月19日(土)
「第15回 アラベスク コンサート ~夢~」(南大沢文化会館 主ホール)に行った。

このコンサートはいくつかの特色を持っている。その一つはプログラムの裏表紙に表れている。企画・マネージメント担当♪和田 冨士子とナレーション・編集担当♪宮本 美知枝の名前が明記されているのだ。演奏者ではない二人がグループ全体の要となっているのは、数多い音楽団体の中でもアラベスクだけではないだろうか。

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今年は被災者への配慮のため派手さを抑える必要があった。また予定していた事が叶わない等の不運も重なった。そんな状況で産み出さなければならない今回の企画に、和田は相当苦慮しただろうと思われる。しかし結果として出来上がったプログラムは魅力的だったし、演奏を聴き終わった時の満足感は従来のステージに劣らないレベルだった。

そしてもう一つの特色は、チラシとプログラム裏表紙の両方にさりげなく置かれたガス灯とベンチに象徴される。これらは「第2部」で実際にセットされ、今回の新しい試みとして宮本が語りで独立した場を持ったのである。

宮本は、従来は曲と曲の間のナレーションだけを行っていたのだが、今年は一つのステージを独占し、堂々たる晴れ舞台に上がったわけだ。宮本が語ったのは小川未明の「月夜とめがね」(抜粋)で、独特の雰囲気を醸し出していた。

そしてこの朗読には♪佐々木 真実子がギターでBGMを添えた。高度なテクニックのソロ(ガーシュイン作曲「ラプソディー・イン・ブルー」)も別ステージで披露した佐々木が、ここでは朗読の引き立て役に徹し、その清楚な響きが好感度大であった。さらにこのガス灯とベンチは和田の原案をもとに佐々木が具体化させたコラボでもあった。アラベスク・コンサート成功の裏にはメンバー同士の緊密な協力体制があった。

佐々木は、またギターの相方♪佐藤順子と佐藤弘和作曲「花曲(Flower Song)~二人の友情のために(予感)」を演奏した。佐藤の淀みなく流れる演奏は「進化系」であった。

一方、佐藤は♪折田緑とのデュエットを3曲演奏した。ピアソラ作曲「タンゴの歴史」より「酒場1900」(折田はフルート)、およびコルベル作曲「アリエッティズ・ソング」と久石譲の「めぐる季節」(これら2曲は折田はフルート、オカリナ持ち替え)だ。佐藤の進化系のギターはどの曲でも心地よく響いていたし、折田の伸びのあるオカリナの音色は観衆をうっとりさせるものだった。

また折田はピアノの♪升谷奈保、フルートの♪浅田明美と組んでベーム作曲「ラハナーとメンデルスゾーンの主題による二重奏曲」を演奏した。二人のフルート奏者がハーモニーで唱和しつつ、なおかつ演奏上の個性の違いが出ていたのが楽しかった。

升谷は、私の記憶が正しければアラベスクのトップバッターをよく勤める。今回も第1部冒頭でブラームス作曲「4つの小品」より「ラプソディー」を披露した。企画、運営の主力としての気遣いに加え、トップバッターの重責を担う貴重な人材だ。

そして升谷と浅田が組んだのがフランクのヴァイオリン・ソナタイ長調(フルートに編曲)の第4楽章だ。二人の演奏者がカノンの掛け合いを楽しみ、その流れが聴衆にも届くような感じだった。難曲のはずだが、よく調和して見事な演奏をしていたと思う。

ここで今回のコンサートのもう一つの特色を紹介しよう。それは、ソプラノの♪柳田るりこと佐々木、浅田が組んだポンセ作曲「エストレリータ」だ。アラベスク・コンサートで初めての編成だ。3人の演奏者はそれぞれが楽しんで演奏し、そのムードに乗って聴衆も楽しくなる、という良循環を生むような演奏だった。中間部でギターが弦楽器のピチカートのような乾燥した音を出したのが新鮮だった。このような気分を高揚させるステージを今後もぜひ打ち出していって欲しい。

今回、柳田はお色直しを2回行った。先に書いた「エストレリータ」では粋な洋装、プッチーニ作曲 歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」ではもちろん和服、そしてレハール作曲 喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」では素敵なドレスという変身ぶりだ。3曲の歌い分けは見事だった。

柳田の歌劇と喜歌劇のソロを支えたのはピアノの♪今野恵子だ。柳田とのアンサンブルでは単調さがなく、双方とも自由度が高い変化に富んだ演奏だった。また今野はリスト作曲「愛の夢」でソロステージも持った。あでやかな演奏だった。

そしてゲストの♪粟飯原(あいばら)俊文(テノール)と♪粟飯原雅子(ピアノ)の2つのステージが加わった。ベッチア作曲 歌曲「ロリータ」とプッチーニ作曲 歌劇「マノン・レスコー」より「見たこともない美人」はどちらも文句なしの名演だった。

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最後に宮本の各曲に添えたナレーションで気がついた点がある。その1つはピアソラ「タンゴの歴史」のステージでは、クラシック音楽的なタンゴを作曲するピアソラは当初「これはタンゴではない」と周囲から受け入れてもらえなかったが、その後努力して自分のタンゴを構築していったという話。

そしてもう1つはリストがそれまでの常識と異なり、ワンマンショーのようなリサイタルを開催し、反発を食らっていた。しかしくじけずに頑張って人々の人気を勝ち取ったという話。

これらに共通して流れている思想は何だろうか?私は、それは障壁に当たってもめげずに乗り越えて行き、その先に幸せを勝ち取るというメッセージに聞こえた。そしてそれは、さりげなく織り込まれた被災地への支援メッセージではなかっただろうか。

アラベスク コンサートは楽しい。来年もぜひ聴きたい。

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