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2011年11月29日 (火)

美術アーカイブ:1978年(14) フリードリッヒとその周辺展

このシリーズは1978年の途中で中断したまま月日が経ってしまった。これ以上放置するといつまでも先に進まないので、この辺で細々と再開しようかと思った。

「フリードリッヒとその周辺展」(東京国立近代美術館)は感動的だった。この頃既に私の抽象偏愛は始まっていたと思うのだが、この展覧会はその偏重をたしなめるかのような迫力を持っていた。

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日頃、赤い夕日など大自然の美しさに触れる機会がある。そしてその神秘な美しさは絵画より深いものがあると感じている。しかしフリードリッヒの描く自然は美しいと同時に強く、厳しい。その作品は絵だとわかっていても、あたかも大自然の脅威を前にしたかのような力を持って迫ってくる。

大自然そのものと同等の強い感動を与える作品を描いてしまうというのは、フリードリッヒにそれだけの力量があるからだろう。このような素晴らしい作品を前にすると、抽象好みの私も具象作品に敬意を払わざるを得ない。

2011年11月24日 (木)

大槻圭子 彩(あや)なすテキスタイル展

2011年11月24日(木)
「大槻圭子 彩(あや)なすテキスタイル展」(成城さくらさくギャラリー)に行った。

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自然の持つ原初的なエネルギーと、数理的・構成的な楽しみが融和したような作品が並んでいた。特に「暖炉の前で夜明けまで」には衝撃を受けた。何と美しいんだろう!

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また「時の流れに誘われ、いにしえの街を彷徨うウール」はクレーの絵画のような楽しさに満ち溢れていた。

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大槻圭子の作品は以前も「国展」で観たことがあったが、今回のようにまとまった数の作品を間近に鑑賞できたのは初めてだった。日頃、どうしても絵画と彫刻に偏重して鑑賞してしまうが、このようにそれ以外のジャンルでも佳品が多いという事を思い知らされた。

クリスマスチャリティーオペラ 「アマールと夜の訪問者」

2011年11月23日(水)
「東日本大震災復興支援 クリスマスチャリティーオペラ あなたに届けたい、ほんとうのクリスマス vol.Ⅳ」(二宮町 ラディアンホール)で裏方を担当した。妻(仮名ジョアンナ)が出演し、そのつながりで大道具スタッフを経験させてもらったのだ。

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例によって妻が出演したコンサートに関しては批評めいた事は何も書けない。何かネタはないかなと思ったら、一つだけあった。それは先日「アラベスク コンサート」で聴いたポンセ作曲「エストレリータ」が冒頭で演奏されたことだ。つい数日前に聴いた曲にまた出会うというのは一種の縁なのか、それとも季節なのか。

初めて聴いたメノッティ作曲 歌劇「アマールと夜の訪問者」は、1951年初演というので現代的な響きを期待していた。しかし実際には調性音楽に少しモダンな和声の味付けをした程度だった。これは同曲がテレビ上映を目的に作曲されたので、茶の間に優しい響きを目指したからだろう。

2011年11月21日 (月)

第15回 アラベスク コンサート

2011年11月19日(土)
「第15回 アラベスク コンサート ~夢~」(南大沢文化会館 主ホール)に行った。

このコンサートはいくつかの特色を持っている。その一つはプログラムの裏表紙に表れている。企画・マネージメント担当♪和田 冨士子とナレーション・編集担当♪宮本 美知枝の名前が明記されているのだ。演奏者ではない二人がグループ全体の要となっているのは、数多い音楽団体の中でもアラベスクだけではないだろうか。

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今年は被災者への配慮のため派手さを抑える必要があった。また予定していた事が叶わない等の不運も重なった。そんな状況で産み出さなければならない今回の企画に、和田は相当苦慮しただろうと思われる。しかし結果として出来上がったプログラムは魅力的だったし、演奏を聴き終わった時の満足感は従来のステージに劣らないレベルだった。

そしてもう一つの特色は、チラシとプログラム裏表紙の両方にさりげなく置かれたガス灯とベンチに象徴される。これらは「第2部」で実際にセットされ、今回の新しい試みとして宮本が語りで独立した場を持ったのである。

宮本は、従来は曲と曲の間のナレーションだけを行っていたのだが、今年は一つのステージを独占し、堂々たる晴れ舞台に上がったわけだ。宮本が語ったのは小川未明の「月夜とめがね」(抜粋)で、独特の雰囲気を醸し出していた。

そしてこの朗読には♪佐々木 真実子がギターでBGMを添えた。高度なテクニックのソロ(ガーシュイン作曲「ラプソディー・イン・ブルー」)も別ステージで披露した佐々木が、ここでは朗読の引き立て役に徹し、その清楚な響きが好感度大であった。さらにこのガス灯とベンチは和田の原案をもとに佐々木が具体化させたコラボでもあった。アラベスク・コンサート成功の裏にはメンバー同士の緊密な協力体制があった。

佐々木は、またギターの相方♪佐藤順子と佐藤弘和作曲「花曲(Flower Song)~二人の友情のために(予感)」を演奏した。佐藤の淀みなく流れる演奏は「進化系」であった。

一方、佐藤は♪折田緑とのデュエットを3曲演奏した。ピアソラ作曲「タンゴの歴史」より「酒場1900」(折田はフルート)、およびコルベル作曲「アリエッティズ・ソング」と久石譲の「めぐる季節」(これら2曲は折田はフルート、オカリナ持ち替え)だ。佐藤の進化系のギターはどの曲でも心地よく響いていたし、折田の伸びのあるオカリナの音色は観衆をうっとりさせるものだった。

また折田はピアノの♪升谷奈保、フルートの♪浅田明美と組んでベーム作曲「ラハナーとメンデルスゾーンの主題による二重奏曲」を演奏した。二人のフルート奏者がハーモニーで唱和しつつ、なおかつ演奏上の個性の違いが出ていたのが楽しかった。

升谷は、私の記憶が正しければアラベスクのトップバッターをよく勤める。今回も第1部冒頭でブラームス作曲「4つの小品」より「ラプソディー」を披露した。企画、運営の主力としての気遣いに加え、トップバッターの重責を担う貴重な人材だ。

そして升谷と浅田が組んだのがフランクのヴァイオリン・ソナタイ長調(フルートに編曲)の第4楽章だ。二人の演奏者がカノンの掛け合いを楽しみ、その流れが聴衆にも届くような感じだった。難曲のはずだが、よく調和して見事な演奏をしていたと思う。

ここで今回のコンサートのもう一つの特色を紹介しよう。それは、ソプラノの♪柳田るりこと佐々木、浅田が組んだポンセ作曲「エストレリータ」だ。アラベスク・コンサートで初めての編成だ。3人の演奏者はそれぞれが楽しんで演奏し、そのムードに乗って聴衆も楽しくなる、という良循環を生むような演奏だった。中間部でギターが弦楽器のピチカートのような乾燥した音を出したのが新鮮だった。このような気分を高揚させるステージを今後もぜひ打ち出していって欲しい。

今回、柳田はお色直しを2回行った。先に書いた「エストレリータ」では粋な洋装、プッチーニ作曲 歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」ではもちろん和服、そしてレハール作曲 喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」では素敵なドレスという変身ぶりだ。3曲の歌い分けは見事だった。

柳田の歌劇と喜歌劇のソロを支えたのはピアノの♪今野恵子だ。柳田とのアンサンブルでは単調さがなく、双方とも自由度が高い変化に富んだ演奏だった。また今野はリスト作曲「愛の夢」でソロステージも持った。あでやかな演奏だった。

そしてゲストの♪粟飯原(あいばら)俊文(テノール)と♪粟飯原雅子(ピアノ)の2つのステージが加わった。ベッチア作曲 歌曲「ロリータ」とプッチーニ作曲 歌劇「マノン・レスコー」より「見たこともない美人」はどちらも文句なしの名演だった。

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最後に宮本の各曲に添えたナレーションで気がついた点がある。その1つはピアソラ「タンゴの歴史」のステージでは、クラシック音楽的なタンゴを作曲するピアソラは当初「これはタンゴではない」と周囲から受け入れてもらえなかったが、その後努力して自分のタンゴを構築していったという話。

そしてもう1つはリストがそれまでの常識と異なり、ワンマンショーのようなリサイタルを開催し、反発を食らっていた。しかしくじけずに頑張って人々の人気を勝ち取ったという話。

これらに共通して流れている思想は何だろうか?私は、それは障壁に当たってもめげずに乗り越えて行き、その先に幸せを勝ち取るというメッセージに聞こえた。そしてそれは、さりげなく織り込まれた被災地への支援メッセージではなかっただろうか。

アラベスク コンサートは楽しい。来年もぜひ聴きたい。

2011年11月19日 (土)

松本記念音楽迎賓館(風物詩仕立て)

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花のちぎり絵

2011年11月12日(土)
大谷秋子とお弟子さん達の「花のちぎり絵」の展覧会を観た(大倉山記念館)。

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なあんだお稽古発表会か、と言うなかれ。多数並んだ作品のどれもが素晴らしい出来栄えだった。

魅力の源泉は何だろうかと思った。色紙をちぎって紙に貼るだけなら、これほど強い印象は出せないと思う。そうではなく「花のちぎり絵」では、材料となる和紙はあらかじめ染料で染めておくのだと知った。この「前工程」を経て、入念に貼り付け作業を行うことによってこのようにアピールする作品群が出来るというわけだ。

アートのジャンルは数多いが、今回は私にとって新しい世界に触れることができた。

2011年11月 7日 (月)

秋の室内楽コンサート

2011年11月6日(日)
「秋の室内楽コンサート」(松本記念音楽迎賓館:世田谷区)に出演した。

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今回はサックス吹きの相方(テツ)と組んだ即興ユニット「トマソンズ」として第3回目の即興演奏を行った。プログラムには「秋に捧げるインプロビゼーション」という立派なタイトルを書いてもらったが、内容的には全く自由な即興である。調性もコード進行も何も事前設定せず、相手の音を聴きながらその場で受け答えするスタイルである。

楽器編成としては、これまでのパターン(最初はバス・クラリネットとチェロ、その後カーブド・ソプラノ・サックスとピアノ)を踏襲した。これが最も慣れているし、お互いに後のほうに華やかな内容を持ってゆきやすい。

その他、チェロでバロック音楽や古典派の曲の演奏に参加した。このような出来合いの曲を演奏するのも楽しいが、自分としては創作ということを前面に出したい。それには2つ方法がある。一つは作曲して自作自演あるいは誰かに演奏してもらうこと。そしてもう一つは自分で即興演奏することだ。

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このところアート鑑賞に精を出すあまり、作曲の時間が圧迫されがちである。そのためなかなか新曲が書けない。書けないと発表することもできない。となると、創作を表出するのは即興演奏をするしか方法が無いのである。今回の演奏会に「トマソンズ」を割り込ませてもらったのはそういう意識が働いたからだ。

でもやはり本格的な作品を作曲して発表したい。今回のメンバーは以前10年間にわたり川崎市でコンサートシリーズを開催していた。その頃は時々自作を披露することがあった。今回でも、作品さえ用意できていれば、同じことができたはずなのである。これは一種の「機会損失」かもしれない。

ではアート鑑賞を減らして作曲のほうに時間とエネルギーを回すか?いやそれはできないだろうなあ。美術館やギャラリー巡りの頻度はここ数年、毎年増加しているから。それを逆に減らすというのはほとんど不可能に近い。さあどうしたものか。

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そんな事を思いながら、松本記念音楽迎賓館を後にした。建物も庭園も素晴らしい。この記事では小出しに写真を掲載したが、建物の内部や庭園の写真は何枚も撮っているので、そのうち別の記事で披露したい。

2011年11月 5日 (土)

リン版画工房展

2011年11月4日(金)
「リン版画工房展」(ギャラリー Gineta:藤沢)に行った。

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「リン版画工房」は神奈川県藤沢市にある版画制作工房だ。そこではアマチュアの版画製作者が学んだり、プロの若手作家と共同制作をしたりして活動を続けている。その工房から生まれた作品が展示されていた。

どの作品も素晴らしい出来栄えなので、これらの作品は本当に素人が作ったのか?と疑ってしまうほどだった。また、工房のメンバーは本当に楽しみながら制作をしているのだなあと思わせる物があった。それはメンバーがまとめた「工房万華鏡」だ。

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この冊子は工房メンバーがそれぞれの文章と作品等の図像を寄せて作られている。学校の卒業文集みたいな体裁だが、中味は濃い。各メンバーが文学などに造詣が深いので、高度な内容を含んでいるからだ。

表紙の、いかにも紙を切り貼りして作りました、というようなたたずまいがまたいい。工房でも手作業の雰囲気がそのまま伝わってくるからだ。この冊子は1冊ワンコインで買うことができる。仲間との活動をこんな粋な形にまとめられたらいいな、という一種のトリガーを得たように感じた。

四季の花 木版画

2011年10月31日(月)
「CNコレクション展 四季の花 木版画」(GALLERY CN:藤沢)に行った。

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酒井抱一など江戸琳派の巨匠が描いた下絵を、後年の絵師が木版画に仕立てた作品が展示されていた。大きな花弁が描かれた作品は、ジョージア・オキーフに通じるものがあり、近くで観ると少々怖い印象があった。

このギャラリーでは東日本大震災の復興義援としてアーティストが制作したグッズを販売していた。その中からバッタが集まった絵葉書を購入。

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よく見ると、これらのバッタは使い古しのブランドものバッグを再利用して制作されていることがわかる。作品名は「バッタもん」。作家は岡本光博。

復興にも様々なやり方があるが、リサイクルもその一つだ。その暗喩なのであろうか。アーティスト達は、このようにして震災復興において自分は何ができるか、という事を真剣に考え、アクションを起こしている。それが頼もしい。

依藤奈奈がロシアで個展

2011年10月23日(日)

小田急「片瀬江ノ島」駅と江ノ電「江ノ島」駅を結ぶ小径には灯台グッズ専門店やレトロなゲーム店などユニークな店が散見される。その道の中ほどにヘンデルが開店したかのような「晴れる屋」というラーメン屋があり、その向いに洒落た画廊がある。そこに水平線が並んでいるような抽象画を見たら、それは依藤奈奈の作品である。

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今年、依藤はロシアのサンクトペテルブルクで個展を行った。幸いそのリーフレットを手に入れることができたので表紙だけ紹介する。よく見ると「依藤奈奈」という漢字や「JULY」などの英語に混じって、図形のようなロシア語の文字が認められる。

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地元のアーティストが世界を舞台に活躍するのは嬉しいことだ。これからも応援してゆきたい。

2011年11月 2日 (水)

ぐるーぷなーべ演奏会

2011年11月1日(火)
「第80回 ぐるーぷなーべ演奏会」(津田ホール)に行った。「小林秀雄 歌曲の世界」~傘寿を記念して~という副題が示すように、全曲 小林秀雄作曲の作品が演奏された。

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このコンサートには「選曲評論」をしてくれ、と言わんばかりの大仕掛けがあった。小林秀雄の代表作「落葉松」がプログラムから欠落していたのだ。もし開演前に選曲評論に取り掛かる時間があったら「代表作が含まれていなかった」と書いたことであろう。

しかしこのからくりは終演後に種明かしされた。アンコールとして小林秀雄本人のピアノと出演者全員による「落葉松」の斉唱が演じられたのだ。観客の疑心暗鬼を最後にすっきり晴らすという見事な演出だった。

では「曲順評論」は書けるだろうか。今回の演奏会では最後の2曲の個性が際立っていた。最後から2番目の「いけない」は前編セリフだらけで歌手(というより俳優)がコミカルな演技を続けるというユニークな曲だ。滑稽な内容の中にちょっぴりホラー的な部分も忍ばせてあり、作詞者(山中陽子)のセンスが感じられた。

また最後の「赤いハイビスカス」はそれまでの西洋風の調性音楽とはガラっと異なり、歌手は沖縄民謡の音階で歌い、ピアノはその音階に沿いつつもモダンな和声を鳴らすという作り方がなされていた。

それらの2曲だけに着目すると、今回のプログラムは野球に例えると直球を続けて最後にフォークボールを2球投げたという感じだ。これだけなら単調な配球に見えてしまう。

しかしこの演奏会はそれ以外にも配慮がなされていたようだ。例えば1曲目「シベリアン・アラベスク」はピアノが近代的な和声を示して新鮮だった。同じく野球に例えると「1球目いきなりフォーク」という印象だ。

また9曲目の「花の春告鳥」はドーリア調が主体で、これも他の普通の調性音楽と比べると和声的な個性があった。プログラムの真ん中寄りに配置されていたので「直球を1,2球投げた後3,4球目にカーブを混ぜる」という配球に近いかと思った。

以上のような組み立てを見て、このプログラムは曲順がよく練られていたと思った。

演奏のことはわからない。特に声楽に関して私は何も知らないので、もどかしいが具体的な感想が書けない。林紀子の演奏に安定感が感じられたことと、ピアニスト(山岸茂人、山口佳代)の曲と歌手に合わせた弾き分けに恐れ入ったことを記しておこう。最後に一言、小林秀雄さんのピアノは自作の曲とはいえ80歳と思えない素晴らしい演奏でしたよ

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