Seedふぁみり~コンサート2011
2011年7月31日(日)
「Seedふぁみり~コンサート2011」(聖ステパノ学園講堂 海の見えるホール:大磯)に行った。
指導者は「Seed音楽工房」主宰の一人ピアニストの♪玉利美哉子。チェンバロをグスタフ・レオンハルトと鍋島元子に師事し、宗教音楽も学んだという。古い時代の音楽演奏に関し厚みある素養を持った人だ。
Seed音楽工房のパートナー・楽器製作者の♪玉利要二はチェンバロの制作だけでなく、ピリオド楽器やモダン楽器の調律・修復も手がけている。今回はアレンスキー作曲 連弾「子供のための6つの小品」の第5曲の演奏にも参加した。
さらにSeed音楽工房には凄腕の協力者がいる。作曲・編曲の専門家 ♪関口泰幸だ。今回の発表会ではリストが作曲した連弾曲「クリスマスツリー」のスコア譜を作成し、自らも第1~4曲の演奏に参加した。
この催しはピアノのおけいこ発表会であり、コンサートではない。しかし主催者の創意工夫と情熱により、一般的なコンサートに劣らない内容を打ち出していたと思う。その要因は次のような点である:
1.発表会を通じて演奏指導のクォリティー向上のアイデアを探っている
アレンスキー「子供のための6つの小品」第6曲「ロシアの主題によるフーガ」は途中にモノフォニックな書法が織り交ぜられているので完全なフーガの体裁を採っていない。しかし主題の反行形などバッハのようなフーガ特有の作曲技法も散りばめられており、子供たちが親しみながらフーガという形式に目を開いてゆく格好の材料となりそうだ。
玉利美哉子はそのポイントを逃さず、バッハの前にこういう曲を弾かせたらスムーズにフーガに導入できるのではないか、というアイデアを述べていた。
2.珍しい曲集は研究課題として全曲演奏に取り組んでいる
アレンスキー「子供のための6つの小品」(全6曲)およびリスト「クリスマスツリー」(全12曲)はどちらもあまり知られていない曲集である。
玉利美哉子と玉利要二は全体の演奏時間に影響を及ぼすのを覚悟でそれぞれ全曲を取り上げ、演奏を分担し、曲集の全貌を捉える努力をしていた。さらにプログラムに貴重な2ページを割いて詳細な(書き下ろしの)解説まで付けていた。
3.初心者はソロより連弾を多く演奏し、鑑賞に耐える形にしている
小さいお子様などでピアノの演奏技術が未成熟の場合は、ソロ曲を弾かせても観客を楽しませるレベルの演奏はできない。
玉利美哉子は(特に初心者の場合)連弾を積極的に取り入れ、その結果として観客も上達者が弾いた結果に近い形での鑑賞ができたように思う。
4.会場がよい
「海の見えるホール」は眺めが素晴らしい。発表会のプログラム表紙裏に貼られた写真はその美しい風景を捉えていた。このように海をバックに演奏するのだ。これなら観客の音楽会としての楽しさも倍加することであろう。
関係者の方々、お疲れ様でした。
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