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2011年7月31日 (日)

Seedふぁみり~コンサート2011

2011年7月31日(日)
「Seedふぁみり~コンサート2011」(聖ステパノ学園講堂 海の見えるホール:大磯)に行った。

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指導者は「Seed音楽工房」主宰の一人ピアニストの♪玉利美哉子。チェンバロをグスタフ・レオンハルトと鍋島元子に師事し、宗教音楽も学んだという。古い時代の音楽演奏に関し厚みある素養を持った人だ。

Seed音楽工房のパートナー・楽器製作者の♪玉利要二はチェンバロの制作だけでなく、ピリオド楽器やモダン楽器の調律・修復も手がけている。今回はアレンスキー作曲 連弾「子供のための6つの小品」の第5曲の演奏にも参加した。

さらにSeed音楽工房には凄腕の協力者がいる。作曲・編曲の専門家 ♪関口泰幸だ。今回の発表会ではリストが作曲した連弾曲「クリスマスツリー」のスコア譜を作成し、自らも第1~4曲の演奏に参加した。

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この催しはピアノのおけいこ発表会であり、コンサートではない。しかし主催者の創意工夫と情熱により、一般的なコンサートに劣らない内容を打ち出していたと思う。その要因は次のような点である:

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1.発表会を通じて演奏指導のクォリティー向上のアイデアを探っている
アレンスキー「子供のための6つの小品」第6曲「ロシアの主題によるフーガ」は途中にモノフォニックな書法が織り交ぜられているので完全なフーガの体裁を採っていない。しかし主題の反行形などバッハのようなフーガ特有の作曲技法も散りばめられており、子供たちが親しみながらフーガという形式に目を開いてゆく格好の材料となりそうだ。

玉利美哉子はそのポイントを逃さず、バッハの前にこういう曲を弾かせたらスムーズにフーガに導入できるのではないか、というアイデアを述べていた。

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2.珍しい曲集は研究課題として全曲演奏に取り組んでいる
アレンスキー「子供のための6つの小品」(全6曲)およびリスト「クリスマスツリー」(全12曲)はどちらもあまり知られていない曲集である。

玉利美哉子と玉利要二は全体の演奏時間に影響を及ぼすのを覚悟でそれぞれ全曲を取り上げ、演奏を分担し、曲集の全貌を捉える努力をしていた。さらにプログラムに貴重な2ページを割いて詳細な(書き下ろしの)解説まで付けていた。

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3.初心者はソロより連弾を多く演奏し、鑑賞に耐える形にしている
小さいお子様などでピアノの演奏技術が未成熟の場合は、ソロ曲を弾かせても観客を楽しませるレベルの演奏はできない。

玉利美哉子は(特に初心者の場合)連弾を積極的に取り入れ、その結果として観客も上達者が弾いた結果に近い形での鑑賞ができたように思う。

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4.会場がよい
「海の見えるホール」は眺めが素晴らしい。発表会のプログラム表紙裏に貼られた写真はその美しい風景を捉えていた。このように海をバックに演奏するのだ。これなら観客の音楽会としての楽しさも倍加することであろう。

関係者の方々、お疲れ様でした。

磯江 毅の遺作展

2011年7月30日(土)
「磯江 毅 = グスタフ・イソエ 真実の写実絵画を求めた画家の遺作80点」(練馬区立美術館)に行った。

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日頃より抽象を愛好し具象に目を向けようとしない私みたいなコチコチの抽象ファンでも磯江の作品には感動した。すごいものを観てしまった。

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音楽ライター・ハシビロコウさんには「薔薇と緑青 Ⅰ」の絵葉書を送ることにした。

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この作品を試しに純粋な抽象作品と捉えて説明してみると、次のようになる:

『黒地に黒い円が描かれ、緑の対角線がスっと通り、その一端には赤い不定形のものが3つ4つ置かれている。また対角線の途中で円の中心付近からは緑の三角形状の図形が張り出ている。これらの図形の形状の対比、および色彩の対比(赤と緑の補色関係)で動的な衝動が生まれるが、それらを円環が取り囲んで沈静化し、画面全体に落ち着きをもたらしている・・・』。

何が言いたかったかというと、画家が志と技術を突き詰めれば、スタイルの違いには関係なく、「突き抜けた」普遍的な領域に到達するのではないか、という事である。

ところで私は「半券の復権」シリーズで昔の展覧会の半券について書くことがある。今回の展覧会の半券が「復権」するのはだいぶ先のことになるから、併せて触れておこう。

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展覧会の中にはチラシと半券のデザインが全く同じものもある。それに対してこの展覧会では、チラシは白くて丸い皿の上の鰯(いわし)、半券は黒に近い灰色の長方形の地に裸婦である。どちらも磯江の代表的な作品だが、形状・色調において反対の性格を持つ作品を選択してチラシ V.S. 半券で対比させたのではないかと思う。この試みは面白い。

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この展覧会は遠かったが、行っておいて良かった。

2011年7月28日 (木)

美術アーカイブ:1978年(1)ヴァザルリ展

過去にヴァザルリの展覧会には2度足を運んでいる。その1回目が「ヴィクトル・ヴァザルリ展」(銀座三越・美術ギャラリー)だ。

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私はヴァザルリが大好きだ。このチラシに並べられた作品はキラキラ光る小宇宙のようだ。ヴァザルリの作品に対する敬愛の念は今も変わらない。しかし今、私を苦しめていることがある。

2回目というのは1981年に西武美術館で開催された展覧会だ。(詳細は、1981年のアーカイブでもう一度書く)。これはかなり大規模な個展で、図録も購入したのだが、その図録を開くと、原発が「とても美しく」描かれた作品がいくつか掲載されていた。先行して一つだけ例示しておこう。

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当時ヴァザルリは関係者から依頼され、原発のPRのためにこれらの作品を描いたのであろうか?その辺の詳しいことはわからないが、現在もしこのような作品が描かれたら徹底的に叩かれるであろう。

私はアートと社会との係わりに関してはあまり興味が強くないし、またあまり係りたいとも思わない。しかしこの件に関しては何となく心が締め付けられるような感じがする。ヴァザルリの「美しい」原発描写作品を、もはや「純粋に」造形美として高く評価するということができなくなっており、それを悲しく思うのである。

でも、それでも私はヴァザルリが好きだ。作品を極力(社会から)独立した造形物として把握しようと努力することによって。

それぞれの時 それぞれの形

2011年7月27日(水)
「それぞれの時 それぞれの形 石彫とブロンズによる」(画廊るたん:銀座)に行った。きっかけは読売新聞(火曜日の夕刊)の展覧会・ギャラリー案内だ。

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御影石、台湾大理石など異なる素材による抽象作品が多いなか、ブロンズの具象があった。その作家・宇多花織が在廊で話を聞くことができて良かった。

渡辺尋志の御影石の作品は、丸みを帯びた2つの直方体がくっついた形をしていた。その接合部分が気になった。2つのパーツを接着したのか、それとも1つの大きな御影石を彫り進み、接合部分を残して隙間を切り取ったのか。後者のほうが圧倒的に難しいだろう。

石川浩は台湾大理石を用いて「風の形」というものを追い求めているようだ。抽象と具象の中間あたりで、爽やかな形になっている。もっと多くの作品を観てみたい。

今回は別の予定があり時間が限られていたのでじっくり鑑賞できなかったのが残念だった。

2011年7月27日 (水)

お清め専用ノート

2011年7月26日(火)
仲間と組んでいる弦楽四重奏団「クワトロ・ロッソ」では練習後に「お清め」と称して一杯やりにいくことが多い。その際必ず持参するのが飲み会専用ノートだ。1冊目を終え、現在は2冊目に入っている。

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このノートにはアルコールが回って面白い発言があったら書き留めておく。しかし後で読み返してみると、なぜ面白かったのか全然わからないものも多い(笑)。それらの屑みたいな言葉の中でも多少マシなものを選んで分類してみた。

■楽器演奏
♪楽譜をめくる音がうるさいから水をシュッとかけておく
♪70歳になったらヴィンテージでいい音が出る
♪右手を暗譜する。そうするといい音が出る。
♪正しい音程ではなく美しい音程で弾く
♪自分の内なるテンションをもって弾く
♪楽譜を後ろから撮っても音は写らない
♪飲んだら弾くな、弾くなら飲むな
♪チェロを売って最高の弓を買う
♪弾けば合わないが弾かねば合う
♪裏切るようなフィンガリング
♪熱中症はピチカートに悪い
♪弁護士より「演奏命令」
♪エコ奏法にポイントを
♪弓にも弱音器を付けろ
♪非公開なら弾こうかい
♪故意に無気力に弾け
♪後打ちのあだ討ち
♪耳からうろこ
♪チェロの開き

■作曲家と作品
♪シベリウスは医者から煙草は一日1本と言われ葉巻を吸った
♪ジョヴァンニが追悼演奏で白鳥を弾くとみんな甦る
♪ぴょんぴょんベートーヴェン
♪今年の風邪にバルトーク
♪おにぎりがコダーイ米
♪シベリアの理髪師

■酒と肴と音楽
♪人参だと思ってアドレナリンを出したら蕪だった
♪ブルーチーズと菊正宗は以外と合う
♪トリオのコクはジョヴァンニが出す
♪日替わり御膳・日帰り午前
♪蟹を食うと表現力が増す
♪人は物を食べると疲れる
♪魂が酒びたり
♪日本酒の赤

■ビジネスと仕事
♪郵便局が火事でも郵便は燃えない。消印が付いているから
♪ジョヴァンニは危機管理が出来ているからすぐ忘れる
♪給与カットされたので節約して松脂を付けなくなった
♪メールの音程が悪いからサーバーに着信拒否された
♪初期投資には無理がある。暑気凍死・・・
♪コーヒー券は販促だが練習しないは反則

■内部統制と会計監査
♪ウォークスルーで一万歩
♪会計良い経過(回文)
♪音程はずれ斟酌規定
♪監査に参加(回文)
♪音程外れ引当金
♪新日本昔ばなし

うーむ。

2011年7月24日 (日)

山内若菜 絵画展

2011年7月24日(日)
「山内若菜 絵画展」(平塚ユニディ内 ユニディーギャラリー)に行った。作家のブログを見たら展覧会のことが書いてあったので知ったのだ。クラスメートのKさんがまた同行してくれた。

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山内若菜とは藤沢市美術家協会関係の会合で出会い、5月に開催された「東日本大震災チャリティー展」(黒崎俊雄美術館:鎌倉)で(小額だが)チャリティー参加作品を購入している。線刻と色彩の美しさは知っているので、今回も期待して行った。

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作家には会えなかったが、作品を一つ(また小額だが)購入した。家並みを描いた素敵な一品だ。全体の雰囲気はパウル・クレー、線刻はラウル・デュフィーあるいはベン・シャーン、色彩は作家独自のものといったところだろうか。

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絵葉書も買った。音楽ライター・ハシビロコウさんに送るのは(作品は異なるが)やはり家並みを描いたものだ。線のタッチと色付けが素晴らしい。

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山内若菜の今後の活躍が楽しみだ。


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ナイトギャラリー・朱夏

2011年7月23日(金)
「ナイトギャラリー・朱夏」(成城さくらさくギャラリー)に行った。まずは屋外に置かれた岩崎幸之助の「太陰暦」に一礼。これがこの画廊に入る前の儀式だ。

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真摯な美術愛好家からは不真面目と罵られそうだが、私は案内葉書に書かれた「美味しいワイン・日本酒」に惹かれてついフラフラっと来てしまったのだ。そして「ついでに」アート作品を観るという不謹慎なことをしてしまった。店主の青山多男さん、すみません。

同行したクラスメートKさん(ニックネームの頭文字)は俳句が趣味で、今回の展覧会をテーマに5句づつ作ろうと誘われたので、地元に戻ってからの遅い「打ち上げ」で「作品」を出し合った。打上げの席で披露し合ったのだが、季語が無いなど厳密に俳句とは呼べないものになってしまった。

以下、作品感想の後に作った俳句を続けたけど、ど素人の作ったものなので無視してください。(あるいは、俳句をやられる方は「下手だなあ」といって優越感に浸ってください。)

画廊では様々な出会いがある。今回の展覧会というか、オープンハウスというか、素晴らしい催しで最大の収穫は(作品の展示は無かったが)版画家の♪安立貴美枝と話す機会を得たことだろう。抽象好きの私にとって、抽象をよく作るという版画家と出会えたのは嬉しい。今後、個展などに足を向けることになるだろう。

もう一つの収穫は、配送されたばかりでまだ梱包が解けていなかった日本画家♪阿部友子の2作品を、店主がわざわざ倉庫から出して見せてくれたことだ。どちらも花を描いたものだったが、若い画家なのに風格を感じた。花は写実的だが背景は抽象化されているという説明を店主から受けた。このような解説は大変勉強になる。

♪野地美樹子の作品も見せてもらった。清楚で好感持てる作品だったが、インパクトのうえで阿部友子作品のほうにより引き寄せられた。(野地作品が悪いということではない)。

画廊所蔵の展示作品の中で最も愛着を持ったのは♪福岡通男の「トスカーナの星」だ。大好きな有本利夫のルネッサンス風絵画にそっくりで驚いた。夭折した有元が乗り移って描いたと思えるほどだ。

     トスカーナの星を利夫に届けたり

また♪宮本三郎の「紅衣」には圧倒された。抽象しか愛好していないと公言している私だが、具象でもこのようにインパクトある作品には畏敬の念を抱く。画面の構成、色彩、マチエール感どれをとっても素晴らしいと思った。

     油絵具と知りつつ惚れる女かな

宮本三郎の弟子、♪鴨居玲の「裸婦」は店主から「いやらしくない裸婦」というコメントを聞いたが、その通りだと思った。雰囲気が暗いので自宅に飾りたくはないが、作品が放つオーラには観た人を逃さない不思議な力があった。

     鴨居描く裸婦の発する重さかな

♪島田章三の「花束をもつ人」もあった。既に高名であり、数々の展覧会に出展している大御所だ。この作家の作品には個性がある。遠くから観ても島田の作品はすぐわかる。このような境地に達する画家は少ないのだろう。

     花束の光は永遠(とわ)に額の中

♪中川一政の「マジョリカ壺の静物」も良かったのだが、あまりに高名で、逆にその作品を間近でゆっくり鑑賞できるという有難さが実感できなかった。

     一政に呑みを止めたる贅沢さ

この支離滅裂な一句は状況説明が必要かな。ギャラリーで振舞って下さったワインを飲みながらの鑑賞だったのだが、中川一政作品を前にして、緊張からか一瞬飲む動作が止まった。名画あり美味しいワインありの贅沢さという、それだけの意味だ。なあんだ。

♪中村宗弘の「秋興」もあった。2008年、横須賀美術館でお祖父さんにあたる中村岳稜の個展を観た。同じように秋の樹木を描いた作品が印象に残っている。やはりDNAを継承しているのだろう。

了解を得てないのでKさんの俳句はここでは書かないが、確認のうえ別の機会に紹介したいものだ。今回のナイトギャラリーは有意義で充実していた。

2011年7月21日 (木)

うちわ展

2011年7月21日(木)
「復興と癒しの風 - うちわ展」(ギャラリー ア ビアント:墨田区吾妻橋)に行った。日曜日に即興演奏で行ったばかりの浅草にまた行ってきた。

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きっかけは横浜のart truthで観た「小早川晶子個展」だ。小早川を含む50人以上のアーティストが制作したうちわの展示だというので、面白そうだと思ったのだ。

♪小早川晶子のうちわは3点展示されていた。絵画作品と同様、明るくシャープな中にシュールが混ざっている感じで楽しかった。上半身は鰐(わに)、下半身は人間の女性というシュールな作品があったが、うちわの裏表に別々に描かれていたのでどぎつい感じがなく、ユーモアが前面に出るという効果があった。絵画とは別の世界がここにあった。

気に入ったので購入したかったのは、♪高下せい子の作品。目をつけた作品(黄色主体の和風の抽象画)は、残念ながら先約があったので買えなかった。しかし高下せい子という素晴らしいアーティストを知ったのが収穫だった。親子のような大小のうちわのセットも素敵だった。

他には♪河瀬和世の和紙のコラージュを施した作品が印象に残った。画廊の方から、貼り方がとても難しいところを美しく貼っている、というような説明を聞いた。シンプルなたたずまいの中に深い造形美があるような気がした。

原 善伸 ギターリサイタル

2011年7月20日(水)
「原 善伸 ギターリサイタル」(横浜みなとみらいホール 小ホール)に行った。演奏者の後輩にあたる友人M君が誘ってくれたのだ。

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私はギターの演奏について何もわからないのであくまでイメージしただけだが、楽譜に忠実に丹精に心を込めて弾く人、という印象を受けた。

冒頭のヘンデルから2曲目のフェルナンド・ソルにかけては、ストイックな弱奏が続いた。観客席で何か少しでも音を立てると、演奏の邪魔をしてしまうので、緊張感が漂った。その後のカタルーニャ民謡の編曲2曲で緊張をほぐし、前半を終えた。このプログラム構成はなかなかいい流れを作っていたと思った。

後半の最初にトゥリーナの曲が3曲並べられた。今回のリサイタルで最も注目した作曲家である。なぜって、あのヴァンサン・ダンディの弟子だからだ。そしてダンディといえば、あのセザール・フランクの高弟。およそギター音楽とはほど遠い世界だ。そのような厳格そうな空気の中で学んだのに、トゥリーナの曲は逆に明るくてみずみずしい。これは厳しい勉強への反発力なのか(笑)。

演奏的に最も研鑽の跡が感じられたのは、イルマルの「バーデン・ジャズ組曲」だ。旋律の流れによどみが無かったから。ポジション移動などで流れが切れるかな、と思う箇所でもリズムが停滞せず、常に前へ前へいっていたのは素晴らしいと思った。

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アンコールの曲では、演奏技術のデパートと言っても過言ではないような多彩な技巧が披露された。私がイメージできなかったのは、小太鼓の音を模した箇所だ。どうやって弾いていたのかわからない。ギターを弾く人ならわかるのだろうけど。

M君、お誘いありがとう。

2011年7月18日 (月)

小早川晶子個展

2011年7月17日(日)
「すみだ川音楽開放区」の帰り、相方テツさんと一緒に「小早川晶子個展」(art truth:横浜)に行った。

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「Animal's Life!」というテーマが示すように登場する動物たちの表情は明るく可愛い。しかし多くの作品は内容的にシュールで、一部はダークな面も見せている。そういう意味で、この作家は善悪、美醜などが混沌とした現代の人間社会を動物たちに語らせているのかもしれない。

スカイツリー五変化

2011年7月17日(日)
「すみだ川音楽開放区」に参加するため浅草に来たら、そこにはツカイツリーの威容が待っていた。ただ観て帰るのは勿体ないと思い下手な写真を何枚か撮った。それを紹介すると共に、自作自演で架空の評価者の論評を添えてみた。

エントリー#1:普通のスカイツリー

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応募者:私は写真は初心者なので、奇をてらわず普通のスカイツリーを撮ってみました。使用機種:FUJI FILM FinePix A800。
評者:あなたは「普通の」と書いておられますが、同時に応募された他の写真は「普通ではない」たたずまいですよね。ということは、ここで「普通の」と書かれたのは他の「普通ではない」作品を際立たせるための方策ということになります。そのようなバレバレの記述は今後おやめになったほうがよろしいかと。また使用機種についても言及されていますが、このような型落ちのデジカメのモデル名をよく恥ずかしがらずに書けたものですね。その心意気は買いますが、この点に関しましても今後自粛されたほうがご自身のためかと存じます。

エントリー#2:映ったスカイツリー

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応募者:スカイツリーがビルのガラス窓に影を写したところを熱写しました。使用機種:FUJI FILM FinePix A800。
評者:これはただ単にビルの外壁にスカイツリーの影が投影されたので面白いから撮影したに過ぎませんね。そしてこのシーンは他の応募者も沢山撮影されています。それ自体はさして珍しいものではないのですから、後は撮影技術で勝負ということになります。初心者のあなたは、そのような土俵に乗る資格はありません。またご自身のコメントの「熱写」という表現も気になります。影が映ったことに引っ掛けて、「熱転写」みたいは単語を思い浮かべたのだとしたら、それは限りなくオヤジギャグに近く、我々審査員を最も怒らせる要因となります。今後ご注意ください。

エントリー#3:負けそうなスカイツリー

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応募者:スカイツリーが四ツ目の怪物タワーと相撲を取り、倒されそうなシーンを激写しました。使用機種:FUJI FILM FinePix A800。
評者:子供にはウケるかもしれませんが、このような幼稚な題材とストーリー付けは写真コンテストには相応しくありません。あなたがご近所のお子様たちの人気を勝ち取るための道具とされるのは自由ですが、このような神聖なるコンテストに応募されることだけは差し控え戴けないでしょうか。また「激写」というキャッチフレーズですが、これは使い古された表現ですので、高得点を狙う場合はかえってマイナスになります。もっともあなたの場合は最初から高得点など眼中にないようですので、仕方ないかとは思いますが。

エントリー#4:チェロケースから生えたスカイツリー

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応募者:チェロのケースの上に穴が空いたと思ったら、あーら不思議、スカイツリーが生えてきました、の巻。使用機種:FUJI FILM FinePix A800。
評者:あなたはチェロをかついで「すみだ川音楽開放区」に参加した際、ついでにこの応募作品を撮ったのでしょう。ですからチェロケースとスカイツリーがごく自然に結びつき、このようなストーリーを思い付いたというわけですね。その辺の浅はかさが減点対象になるのです。多少ましな評価を得たいのであれば、「なぜチェロケースか」というコンセプトを必死に考え、文学的に味のある表現で付け加えなさい。そうすれば、審査員の中に赤瀬川源平先生みたいな人がいた場合、まぐれ当たりの高得点をもらうというわずかな可能性が開けます。

エントリー#5:スカイツリーを囲むビル群

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応募者:ツカイツリー単独ではなく、アサヒビール本社の炎のオブジェなど近隣のビルをひとかたまりとして捉えた意欲作です。使用機種:FUJI FILM FinePix A800。
評者:「これは傑作だ」とご自身で思われているのでしょうか。しかし意気込みをくじくようで大変失礼ですが、これは吾妻橋から撮ったものですね。このシーンは多くの人がカメラに収めていて、何もあなただけの専売特許ではないのです。地下鉄の浅草駅に到着し、地上に出て吾妻橋を渡ろうとする人は、たとえこのシーンのことを何も知らなくても、橋を渡りながら自動的に知ることになります。ですからこのシーンは多くの写真家に共有の「暗黙知」と言っても過言ではないでしょう。

うーむ・・・・・・・・・・・・。

すみだ川音楽開放区

2011年7月17日(日)
「すみだ川アートプロジェクト2011」の「アンサンブルズ・パレード/すみだ川音楽開放区」に参加した。

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このプロジェクトはアサヒビールがCSR活動の一環として企画し、音楽家の大友良英が牽引役となって進められた催しだ。

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チャンチキトルネエド(人力車に乗って演奏)、深川バロン倶楽部(ガムラン)、中学生ブラスバンドや私たちのように一般公募で参加したメンバーは総勢2百数十名に達したそうだ。

私はユニット「トマソンズ」として、相方のテツさん(今回はバスクラリネット)にチェロで唱和しながらフリーの即興演奏を行った。ユニットを組んでこれが2回目の演奏であり、かつストリートデビューとなる重要な機会であった。

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第1回目(5月14日:永山にて)はピアノがあったので、最初はチェロから入り途中からピアノに乗り換えた。しかし今回はストリートであり鍵盤楽器を持って来なかったのでチェロだけで頑張った。

演奏前の控室の様子。中学生のバンドか。

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こちらには大きな太鼓が。

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演奏タイムが始まり二人で細々と演奏していたら、いろいろな人との出会いが生まれた。ある人はピアニカをぶらさげて加わってきた。「なんだ、ピアニカか」と侮るなかれ!後でわかったのだが、その人は「しばてつ」さんという即興の達人だったのだ。

怖いもの知らずの私は、「しばてつ」さんの華麗なるピアニカの弾き回しに負けじと弾き散らかしたが、これはいささか子供っぽい反応だったと反省している。しかしそのような体験のおかげで、今後のトマソンズの即興演奏に何らかの光明を見出せたような気がした。

他の演奏も面白かった。テルミンの技術を使った楽器を操る人達もいた。

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隅田川沿いの日当たりが強いところで頑張って演奏するグループもいた。

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民族音楽のグループは会場一帯を練り歩いていた。

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相方はマウスピースを取り外し、楽器本体無しで演奏を始めた。この超絶技巧!向こうに佇む美女は相方の妙技に魅せられたのであろうか。

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最後は屋形船に乗船した大友良英ともう一人が指揮をして全員合奏。指揮者が持っているのは棒ではなく色とりどりのうちわ。白が出たらドン!と鳴らし、青が出たら音を伸ばすなどのルールに全員が従ってゲンダイオンガクが演奏された。

終演後、横浜中華街に移動し、行きつけの大新園で打上げ。さらに相方の趣味でミントンハウスへ。

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カウンターから目の前のレコードを眺めつつキース・ジャレットについて相方と話し、ふと壁面を見上げると、そこには同じくキースが。苗字はヘリングで少し違うが・・・。

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店内は狭いのでチェロは外で待っていてもらった。街灯の淡い光を受け、緑に囲まれたその場所はプチ・熱帯地方か。

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店内の電球も蛍光灯には無い味わいが。横浜(ハマ)の夜はふけてゆく・・・。

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サロンライトコンサート

2011年7月16日(土)
「サロンライトコンサート」(永山公民館・談話コーナー)に出演した。

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私は「音楽集団モザイク」の一員として次の3曲の演奏に参加した:
♪テレマン作曲「ターフェルムジーク」ニ短調
♪ヴィヴァルディ作曲「協奏的トリオ」ト短調
♪「日本の四季」(複数の編曲者による編曲)

前回は相方と組んだユニット「トマソンズ」の初の即興演奏が実現した。今回は、翌日に第2回の出演が予定されていたこともあり、この永山の舞台では出演しなかった。

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打上げは前回同様、中華「紅鯉魚」にて。翌日の演奏が頭をよぎり、あまり杯を重ねることはできなかったが、楽しいひとときだった。

2011年7月10日 (日)

大工・齊藤 登 展

2011年7月6日(水)
過日になるが、「第5回 大工・齊藤 登 展 ~手作りの温かさを感じて~」(湘南西脇画廊)に行った。

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アーティストは50代の大工さん。仕事を終えた後、夜間に「芸術作品」を手がける人だという。

作品一つ一つに味があり、かつ実用的だ。例えば案内はがきの写真手前に見える三角形の椅子は、6つ並べると六角形のテーブルになる。また収納の際は互い違いに積み重ねることが出来るのでスペース効率が高い。そして何より素材感じがあり、作りのがっしりしている。

画廊のオーナーは大工・齊藤 登の芸術的センスをしっかり見極めたうえで、画家・彫刻家などと区別することなく作品を紹介していると言っていた。単なる大工仕事を紹介するなら、それは建設業者になってしまう。そうではなく、画廊が芸術家の作品を広めているのである。

作品は、椅子、テーブル、物入れ、花器置きなど多彩だ。作家は50代で若干高齢に差しかかっているとはいえ、これからまだまだ長く現役で作品制作を続けられる人だと思う。今後のユニークな作品が楽しみだ。

2011年7月 6日 (水)

「路上」

2011年7月6日(水)
路上観察に行った。いや正確には「路上」と名付けられた企画展示を観た。東京国立近代美術館の「パウル・クレー おわらないアトリエ」の「B面」企画だ。

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教祖・赤瀬川源平先生への信奉心が強いと「路上」というキーワードに敏感に反応してしまう(笑)。今回の企画は同美術館独自のものであろう。でも部分的には路上観察のコンセプトが忍び込んでいるようで、またそれが面白かった。

今回のような切り口で作品を並べて楽しむのは良いことだと思う。ジャンル、流派などありきたりの分類軸ではなく、異なる角度と視点により一見相互に無関係な作品群を一つに括ってみるのは新鮮だし新たな驚きと発見を生む可能性があるから。

クレーの展覧会の陰で目立たなかったことは事実ですが、この企画は楽しめましたよ。ありがとうございました。

パウル・クレー おわらないアトリエ

2011年7月6日(水)
「パウル・クレー おわらないアトリエ」(東京国立近代美術館)に行った。またまたおなじみF君から貰った招待券を活用したのだ。F君、最近多くの展覧会にタダで行けて嬉しい。感謝してるよ。

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クレーともなると、学芸員をはじめ関係者に力が入るのだろう。チラシと半券を全く異なるデザインにするあたりにその意気込みが感じられ、これも嬉しい。

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今回は「制作過程」に重点を置いた企画ということだった。私は一般的に制作過程に関してはあまり興味がない。しかしクレーの場合は、制作のステップそのものにリズム感があり、音楽的要素があるので特別だ。

例えば素描と彩色された作品の両方を対比させ、どちらも作品として独立しており、かつ素描は彩色された作品の下絵としての機能も果たしているという話は面白い。

今回の展示で最も好きだった作品は、過去に何回も観た「ゲルストホーフェンの回想譜」だ。音楽ライターのハシビロコウさんへの絵葉書はこれで決まり。

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この作品は淡く彩色されてはいるが、本質的には線刻の美しさが中心である。私のクレー好きは、結局クレーの線描に端を発している。だから今回展示された中でも「満ち潮」、「水門での動き」などモノクロームの線画に最も惹かれるのだ。

クレーは線の構成からスタートし、色彩に関しては「オクテ」だった。でも私が線刻にこだわるのは、クレーが色彩で出遅れたからではない。遅く学んだといっても、結果的にクレーの色彩はそれなりに一つの世界を形成しているから。そうではなく、ただ単純にクレーの線の構成が好きだというに過ぎない。

なぜクレーが好きかという点に関して論理的な説明は難しい。みっともないが「好きだから好き」ということになる。幻想小説家レイ・ブラッドベリがなぜ好きかと質問されても同じ答えを言うであろう。ホラー小説家H.P.ラブクフラフトもしかり。バッハは・・・音楽については説明できると思うが、この記事から脱線しすぎるので別の機会にする。

2011年7月 2日 (土)

モホイ=ナジ/イン・モーション

2011年7月2日(土)「視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション」(神奈川県立近代美術館 葉山)に行った。

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先に観た「ムットーニ ワールド からくりシアターⅡ」同様、おなじみF君から招待券をもらったのだ。F君何度もありがとう。



私はクレーとバウハウス命なので、バウハウスの教授陣はみな大好きだ。そもそも美術が好きになったきっかけは♪パウル・クレーの線刻だし、♪カンディンスキーの抽象画も中学・高校の頃から好みだった。この二人は別格で、個展だけでも複数回づつ観た記憶がある。

これに対して同じバウハウスで教鞭を取った他のアーティストはなかなか個展を観る機会が少ない。センスの上では抜群なのだが、作品が地味で数が少ないからだろうか。2004年には東京国立近代美術館でようやく♪ヨハネス・イッテンの個展が開催されたが、♪モホイ=ナジに関してはずっとおあずけで、今回が日本で初めての個展だ。嬉しさもひとしおである。

モホイ=ナジの生涯にわたる作品300点を観て思ったのだが、このアーティストは私の構成に対するあこがれを体現してくれている。言い換えれば、もし私に才覚と技量があったら、モホイ=ナジのような芸術家になり、モホイ=ナジのような作品を創造したかもしれないということである。残念ながらそれは空想上のことだが(苦笑)。

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年譜にはモホイ=ナジが出会ったアーティスト達の名前が散りばめられていたが、これがまた私の好みとぴったり一致したので嬉しかった。

◆1920年(25才) ♪シュヴィッタース、♪ハンナ・ヘッヒと出会う。(ハンナ・ヘッヒに関しては、2003年に町田市立国際版画美術館での個展を観た記憶がまだ新しい。)同年、ロシア構成主義の♪マレーヴィッチ、♪リシツキー、♪ロトチェンコ、♪タトリンに強い関心を抱く。

◆1923年(28才) ♪パウル・クレーの後任としてバウハウスで教鞭を取る。

◆1932年 ♪ベン・ニコルソンと知り合う。

◆1934年(39才)パリでの個展を機に♪ブランクーシ、♪アルプ、♪モンドリアンらと知り合う。

◆1935年(40才) ♪ハーバード・リードの勧めでロンドンに移り、♪ヘンリー・ムーア、♪バーバラ・ヘップワースと知り合う。(ヘップワースは彫刻作品「子午線」が絶品)

この展覧会は行って良かった。F君のおかげだ。

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