蒲郡:屋外彫刻を海に求めて
2011年5月5日(木・祝日)
愛知県の蒲郡に行った。三河湾と伊勢湾の間をクルーズするのが主目的だったのだが、F君の命令(屋外彫刻の調査)のプレッシャーが重くのしかかっていた。しかし静岡県でも愛知県でも、訪ねた先では屋外彫刻にめぐり合うチャンスが極端に少なかった。
しかもこの日は、ほとんどの時間海の上に出るので、屋外彫刻に出会うこと自体が困難であった。我が愛するホラー作家L.P.ラヴクラフトには「未知なるカダスを夢に求めて」という作品がある。この日は「あるはずもない屋外彫刻を海に求めて」とでも言えようか。
そんな思いを抱いて港に来たら、とんでもない物に歓迎された。何だこれは?いきなり屋外彫刻に出会えたのか?巨大な人影が宙を舞っている。
しかしこれはリゾート地を訪れる子供達を楽しませるための巨大風船だったのだ。人間の形をして、その姿を自在に変化させている。
そうこうするうち、クルーザーは蒲郡を出発した。ああこれで帰港するまでは屋外彫刻を観ることはないのか、と半ばあきらめかかったその時、奇跡が起こった。こ、これは何だ?先ほどの風船に続いて、海面にも人を模(かたど)った彫刻のような物が・・・。
これはクルーザーが起こしている波に過ぎないのだけれども、その形が人物に似ているので異様な感じがする。屋外彫刻を祈念する思いが、このような妖異なる物を産み落としたのであろうか?
すると連続して奇跡が起こった。高い城壁に取り付けられた梯子状の物体。これはドナルド・ジャッドの「箱」を「梯子」に置き換えたような作品かな?題して「ジョヴァンニ・スキアリの梯子」なんちゃって。
これは、もうお見通しだと思うけど写真を90度傾けただけだよ。場所は中部国際空港セントレア。この巨大な物体は着陸する飛行機を誘導するための設備だ。クルーザーをその近くに停泊させ、下から着陸態勢に入った飛行機を見上げるという面白い経験をした。
次に日間賀(ひまか)島に寄航した。名前のとおり暇そうな島だが、この「ぞろぞろ出て来る」という彫刻(?)作品は結構忙しそうだ。
そして旅人を時間旅行に誘うこの看板!彫刻だけでない。この島には平面作品も勢いを持って鑑賞者を魅惑している。
この島は街路風景がそのまま作品となっている。島独特のこの坂道を見よ。人を不安に陥れる禍禍(まがまが)しいオーラを感じ取れないだろうか?
赤江 瀑というホラー作家に「海贄考」(うみにえこう)という作品がある。拙ブログは文学作品紹介を目的とはしていないので、その内容紹介は割愛するが、要するにそこに描かれた漁村の風景のイメージがぴったり重なるのだ。
「海贄考」では坂道を下りながら海に出ようとするシーンがある。写真のように道の両側には家並みがびっしりで、いくら行っても海に出られないという閉塞感が描かれているが、そのことだ。(創元推理文庫「日本怪奇小説傑作集 3」に収録されているので、興味ある方はぜひ読んでみて下さい)。
勿論、林丈二大先生ご専門のマンホールの蓋も健在だ。この島の特産は蛸と河豚(ふぐ)。その河豚をデザイン化した紋様だが、なかなかイケている。
船着場の丸い蓋はもっと年季が入っている。錆もまた魅力なり。千利休もワビ・サビを奨励したではないか???
すると、ついに目指すものを発見。この「屋外彫刻」を観よ。
石で作られたヒヨコたち。それだけならどうって事ないが、4匹のヒヨコが並んで木の枝に留っている。普通の鳥でもヒナには難しい芸当だが、これはヒヨコ、つまり親鳥はにわとりであることに注目されたし。
F君、この記事を屋外彫刻の調査レポートとして認めてくれるかな?
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