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2010年10月27日 (水)

会津・漆の芸術祭

2010年10月24日(土)
「会津・漆の芸術祭」の一端を鑑賞した。これは福島県の各地(会津若松市、喜多方市、三島町、昭和村)で同時開催されているアートイベントだ。

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いきなり暗い話で恐縮だが、会津漆器が不振をきわめ、倒産や廃業が相次いでいると聞く。会津漆器は歴代の藩主の努力により「堅牢美麗」な特産品として知られていただけに残念だ。

今回のイベントは、辛い時期を迎えている会津漆器の復興という困難なミッションを背負っているのだろう。漆産業だけでなく、会津の産業全体の底上げも視野に入れているに違いない。

会津の街中には多数の展示場が散在していたが、私はまずその中心ともいえる「漆の芸術祭インフォメーションセンター」(七日町通り)を訪れた。

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すると「Aizart」というクリエイティブ集団が「japan~アートと甲冑」という作品を展示していた。

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このグループは「アートで会津を元気にしよう!」というスローガンを抱えて活動していると担当の方から説明を聞いた。グループ名「Aizart:アイザート」は、会津(Aizu)とアート(Art)をくっつけた合成語である。不況にあえいでいる地元を何とかして活性化させたいという強い願いがこのネーミングに込められていたのだ。

それぞれのアーティストが同様の熱い思いを作品に注ぎ込んでいると思うと、個々の作品の観かたも変わってくる。例えば同センターにあった東北芸術工科大学・竹内研究室の「漆器のみち」という作品を取り上げてみよう。

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この作品を「アートで会津を元気にする」という視点から観てみよう。電球の傘に見立てられて提灯行列のように並べられた漆の椀の列は、この地で興され盛衰を繰り返した漆産業の縮図のように見えてこないだろうか。

何度か書いているが、私はコンセプチュアル・アートや社会派のアートをあまり好まない。しかし今回の場合、中心に置かれたコンセプトは「会津を元気にする」あるいは「会津漆器を復興させる」というようなものであり好感が持てる。そのため、展示作品も好意を持って鑑賞しやすい。

今回のイベントは、アートの力でシャッター商店街を救おうというものだから、アートが街に対して一方的に慈善を施す形のように見える。ではアート側にはメリットが無いのだろうか?

例えば私のようなコンセプチュアアル・アートや社会派アートを好まないお爺さんがいたとする。そのお爺さんも、会津の漆を救うという活動には共感を覚えるだろう。そして「Aizart」などの活動をもしそのお爺さんが賞賛するなら、「お爺さん、これは一種のコンセプチュアル・アートですよ」と説明してあげる。

以上のようなやり取りがあるなら、それは現代アートに眼を向ける人を増やすことにならないだろうか。つまり今回のイベントが「いい意味」でアートにもキックバックがあることになるのだ。この言葉に問題があるなら、アート側もある程度メリットを享受する仕掛けが考えられる、と言い換えよう。

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このイベントはよく実現したと思う。自治体に強力な理解者がいたか、アーティスト側にカリスマ的な指導者がいたか、あるいは両方か・・・。並大抵の努力ではこういうイベントは成立しないと思う。

例えば私が頭の固い役人だとする。そしてアーティストが今回の企画書を作って自治体へ協力を求めに来たとする。私はビジネスプランを要求するかもしれない。そして収支が合わないなら門前払いするかもしれない。

金額計算だけなら、このイベントはたぶん赤字であろう。アーティストたちがいくら手弁当で頑張っても、ポスターなどを作製する費用はゼロにはならないから。そして売るほうの経済効果は、その測定が困難である。イベントをやった場合・やらなかった場合の商店の売り上げの差異をどうやって導くか、これは難しい。

ただこういうイベントは金だけでなく、精神面の収支がある。「街を元気にする」というのは、内面においてイベント前より豊かになることを意味する。この内面的な収支は、圧倒的に黒字であろう。そうでなければ、イベントをやろうという気すら起きないはずだ。

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以上のような事が頭の中を巡り、多少混乱したが、イベントの一端を鑑賞した「読後感」は爽やかであった。

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コメント

アートで街起こし的なコンセプトっていろんな各地でやってますね。秋田県の大館市もそう。そのアンテナショップ的なものが、Art Chiyoda 3331の中で常設でありますね。
Hiroki Tee(津久井広樹)

Hiroki Teeさん、コメントありがとうございました。急に寒くなりましたが、アートで身体を暖かくしましょう。

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