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2010年10月20日 (水)

小倉朗 室内楽作品展

2010年10月18日(月)
「没後20年 小倉朗 室内楽作品展」(銀座王子ホール)に行った。

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学生時代、私は時々ヴァイオリンを弾く友人を伴い、チェロを持って小倉朗の自宅を訪ねた。そこで様々なエピソードが生まれたが、それは機会があったら別の記事にまとめようと思う。ここでは作曲評論に絞って書きたい。

ただ小倉朗を個人的に知っていたという事情があるため、攻撃的な作曲評論はできない(笑)。良い話しか書けないわけだが、今回演奏された中で「弦楽四重奏曲 ロ調」は心底大好きな曲だ。だから自然体で書いても、それがそのままいい話になるので大丈夫だ(笑)。

「弦楽四重奏曲 ロ調」は古今東西の弦楽四重奏曲の中で最も愛する曲の一つである。何が良いか?私の考えを一言で言い表すと、『芸術音楽はこうあって欲しい』という音構成になっている、という事になるだろうか。

例えば第1楽章の第1主題を見てみよう。そしてまず旋律のリズムに着目しよう。♩♩♩/♪♪♩.♪/♩.♪♪♪/♪♪♪♪♩~という具合に小節ごとに異なるリズムが4小節間続く。つまりこの4小節はそれ自体が独自のリズム構成となっているのだ。そして旋律にはリズムだけでなく音高という要素もある。大雑把には、上行・下行という線がある。そして2音間の音程関係は、這うような2度から飛ぶような7度の跳躍まで様々な形がこの4小節間に散りばめられているのだ。さらにこの旋律には近代的な和声が施され、立体的な構成が成り立っている。このように、たった4小節の主題を取り上げてもこれだけ豊かな内容が盛り込まれているのだ。

他にも様々な作曲上の工夫が凝らされている。「そろそろ出て欲しいな」と思う頃にフガートが鳴るなど、ポリフォニーの技法も随所に見られて曲を面白くしている。第4楽章ではロンドの主題が途中で反行形になる。これはよくあるフーガの書法の一つだが、軽快なリズムに乗っているので重苦しさが無い。第2楽章の中間部は全楽器のピチカートで奏され、スイングするようなリズムを相俟ってユニークな効果を生んでいる。

だいぶ昔だが、ラジオのFM放送で巌本真理弦楽四重奏団によるこの曲の演奏が流れたことがある。私はそれをカセットテープに録音して、よく聴いていたものだ。それからだいぶ経って「日本の弦楽四重奏曲」という企画もののCDが出てこの曲が含まれていたので迷わず買った。昔からレコード、CD等の収集は趣味ではなかったのだが、この曲が入っているとなると話が違う。

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可能なら楽譜を入手して私が所属する「クワトロ半世紀」弦楽四重奏団でぜひ演奏してみたいものだ。こんな素晴らしい曲が出版されていないなんて、本当に淋しい。具体的なことは伏せるが、もっとつまらない曲の楽譜が堂々と売られていると思うと、憤りを感じる。

実は、これもだいぶ昔の話だが、遠山音楽図書館にこの曲の手書き総譜がマイクロフィルムに収められていることを知った。それを借りてパート譜を作ろうと思い、紙への出力を依頼した。しかし当時普及していた、いわゆる「青焼き」(湿式コピー)だったので非常に見づらく、この方法は断念した。この曲への情熱はその頃から芽生えていたのである。

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