定点観測地点の「影」
愛犬「哲学者」を撮影する定点観測地点には、かつて一対の遊具があった。しかし、そのうち1つが老朽化のため撤去され、あと1つを残すのみとなった。
木製の馬なので風雨にさらされていると、いつか朽ち果てる運命にある。一方「哲学者」も見かけは若いが既に老犬。こちらもいつまで一緒に散歩できるかわからない。そのいとおしさに、つい双方を一緒にカメラに収めたくなるのである。
この写真には不可思議なところがある。「哲学者」はくっきりとした影を伴い、その影にもちゃんと足がある。しかし背後にある看板の影を見よ。な、なんと足(支柱)の影がない。これはいかなる現象であろうか。看板の影はそのように観る者を不安にさせる妖力を発していたのである。
影は文学者たちを様々な方向に誘う。中村草田男は明快さ、潔さを身上とする。
冬の水一枝の影も欺かず
これに対して高浜虚子は鑑賞者に疑問を投げかけてくる。
箒木に影というものありにけり
この定点観測地点の看板は、どちらかというと虚子の方向に近いだろうか。そして、わが「哲学者」はいかなる思索をめぐらしているのであろうか。
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