束芋 断面の時代
束芋を始めて知ったのは2004年の春、「美術手帖」4月号(“いま世界を動かしはじめた最新アーティスト100人“特集)の誌上だった。
同誌には高嶺格、野口里佳など現在高名になっているアーティストが名を連ねている。束芋は彼等と並んで紹介されていたわけで、この時点(2004年)で既に注目を集めていたことになる。その後、束芋は何となく気になるアーティストとなった。
束芋の作品を一度観てみたいと思い続けて2年が経過し、2006年の6月に原美術館で開催された「ヨロヨロン『束芋』」で初めて実際の作品を観た。この展覧会はテレビで紹介されたこともあり、若者が大勢押しかけて大盛況。目玉は「日本の台所」だった。
この展覧会の感想を拙ブログに書いたとき、「美・混迷と創造-日本画の冒険者たち」(吉村貞司著・六興出版)から「日本人アーティストが西洋に負けない作品を作るために西洋遠近法の空間的閉塞性という弱点を発見し、無限の拡がりを得られる日本画の優位性を強調した」という内容を引用した。そして束芋はあえてこの流れに逆行したと書いた。台形状に配置したスクリーンがそういう印象をもたらしたのだ。
そしてまた2年が経過し、再び横浜美術館の「Goth展」で束芋の作品に再会した。
この時点では束芋は既にトップアーティストになっていた。同展も束芋目当てに行ったのであり、案の定他の作品は面白くなかった。拙ブログでは「ギニョる」の感想として「単調なのだが不思議と飽きない」と書いた。
そして今年の「束芋 断面の時代」。率直に書くと、面白かったのは事実だが、初めて束芋の作品に接した時のあの新鮮な驚きは薄れていた。これは作品の質が落ちたのではなく、鑑賞する側が慣れたことに起因するのであろう。
今回はむしろ束芋の創作の原点を振り返るという機会になった。動画ではなく、その原画、あるいは独立したペン画が多数展示されていたからだ。それらの作品は非日常的なアイデアに満ちているのだが、エロティック・グロテスクという側面が一線を超えておらず、むしろ抑制されておとなしいという印象を受けた。そして大事なことは、大変上手だということだ。デッサンがしっかりしている人なのだろう。
今後、束芋は新たな仕掛けを作ってゆくのか、それとも既存の手法を堅持しながら完成度で勝負してゆくのか、ウォッチするのが楽しみだ。
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