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2009年9月27日 (日)

特別展 黄金の都シカン

「特別展 黄金の都シカン」(国立科学博物館)に行った。

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上野にはよく足を運ぶが、国立科学博物館を訪れることは非常に少なかった。同館の企画展に行くのは、なんと35年前(1974年)の「科学者レオナルド・ダ・ヴィンチ展」以来になる(ジョヴァンニ・スキアリ展覧会データベースより)。美術館にはよく行くが、博物館は敬遠してきたということか。

ここで気になることを思い出した。日本語では「美術館」と「博物館」を区別するが、英語ではどちらも「ミュージアム」で同一だということ。日本において博物館の人気が美術館に押されがちなのは、実はこのような文化や言語上の根本的な特質がからんでいるように思えてならない。

試みに「国立科学博物館」を「ナショナル・サイエンス・ミュージアム」とそのまま英語に置き換えてみると、たったこれだけの操作でずいぶん印象が変わる。今回の展覧会は宣伝の効果で盛況だったようだが、さらにネーミングの改変によって集客力が向上すると考える。上記のことは、実は展覧会を観終わった後で感じたものだ。

なお同館の正式な英語呼称は「National Museum of Nature and Science」であり、これを逆に日本語に直訳すると「国立自然・科学博物館」となる。英語では「自然」という文言が加わり、より実体に近くなる。でも現在の呼称「国立科学博物館」のほうが短く引き締まって響く。いろいろ難しいなあ。

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さて展覧会の印象だが、入場した時は、いつもの癖で「美術館」に行ったと思いこみ、展示物を「美しい」とか「構成感を感じる」などという視点で観始めてしまった。例えばこの金杯の紋様は人間の顔を象っているが、横に並んだ二人の顔で一つの眼を共有するなど造形上の工夫が凝らされていた。

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このように展示物を純粋に「美術品」という視点でまずは観てしまったのだ。

ところが「3Dシアター」でロロ神殿の発掘を推進した島田教授の信念を知ると、展示物はその「出土品」であり貴重な「考古学上の史料」だということを再認識することになった。

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しかし史料だからといって、美術品としての価値が損なわれることはない。いやむしろそんな昔に作られたものが、こんなに美しいのかと驚く。「博物館」での展示物観賞は、この「史料」と「美術品」という両側面から捉えて味わうと深みが増すような気がした。そうすることにより、来館したところは「博物館」ではなく「ミュージアム」という空気になってくる。

展示方法は、来場者の立場に立って考えられていたと思う。横に並んだ展示物は適度な距離を置いて設置されており、比較的ゆったりと観ることができた。

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展示のしかたには課題も残ったと思う。例えば展示室の中央に置かれた「神輿」を観賞しようとすると、壁面に架けられたビデオ映像が視野に入ってくるので落ち着かないというような点である。

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逆に、限られたスペースの中に異なるメディア(出土品の現物、ヴィデオ映像、説明パネルなど)をバランスよく配置し、来場者の様々なニーズに広角的に対応できるようになっていた点は素晴らしいと思った。

これらは相反的な要因であり「あちらが立てばこちらが立たず」的な難しさがあるだろう。企画スタッフの苦労がうかがえた。

最後に思ったことは、「3Dシアター」を冒頭で観るように順路を設定すればよかったのに、ということである。そうでないと私のようにまず美術品の鑑賞だという一種の先入観で観始める可能性があるからだ。

最初にシアターを観ておけば、この発掘が世紀の大発見であるということと、埋葬のあり方などを通してこの都の文化的背景をまず頭に入れることができる。そうした上で個々の出土品を観ると、その深度が全然違うものになる。

建物の構造とか、入場者の制御(3D用眼鏡の配布などを含め)の難しさなど、阻害要因が多数あったかと思うが、これは素直な感想だ。

なお今回は「一日ブログ記者」という企画に乗らせて戴きました。ありがとうございます。私の場合、写真が下手であるのと、美術に対する専門知識がないという事情がありましたが、楽しませて戴きました。スタッフの皆様も親切で感じよかったので、その点にも感謝いたします。

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