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2009年3月 9日 (月)

選抜奨励展

2008年3月7日(土)
「第28回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」(損保ジャパン東郷青児美術館:新宿)に行った。

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毎年楽しみにしているシリーズで、今回も期待を裏切らない内容で楽しかった。全体として昨年より迫力が増していたようだった。

<抽象作品>
毎年選抜される作品は具象が主流なのだが、若干抽象作品も選ばれている。私はもともと抽象好みなので、どうしてもそちら(抽象)に票を投じたくなる。

最も好ましく感じたのは、◆烏頭尾寧朗(うとお やすお)の「時の忘もの−青春の日々-」だ。曲線の構成に添えられた青、緑、黄などの淡い色彩が知的で味わいのある空間を構成している。作者自身が「大自然への畏敬の念」、「現代人が失った、いや忘れてしまった、感性を取り戻したい」という思いを述べられているが、そういうテーマを除いてただ単に抽象構成として十二分に味わえる傑作だと思う。

◆坂巻登水(さかまき とみ)の「宙(そら)から」(受賞作品は「宙からⅡ」)も好ましい作品だ。味わい深い曲線と直線、渋い色調で柔らかい画面に仕上がっているが、そこから発せられるオーラは強烈だ。

◆服部誠(はっとり まこと)の「UF-71」はそのユニークさに惹かれた。金属部品の集合体が崩壊するようなイメージだが、その構成感がたまらない。薄い緑と薄い青という一見合わなそうな色を対峙させ、調和させているのは見事だと思った。

<幻想・心象風景>
印象深かったのは、◆株田昌彦(かぶた まさひこ)の「Round about」だ。像とコンビナートのようなものを合体させた超自然の風景だ。このての作品は一歩間違えると幼稚っぽさが出てしまう。しかしこの作家の場合は、描写力の確かさで安心して見ていられる佳作に仕上げたと思う。

◆成田玄治(なりた げんじ)の「風の歌」は風を表す曲線構成の向こう側に浮き出る建造物の構成感が感じられ、爽やかで楽しい空間を生み出している。けばけばしさがなく、奥ゆかしい半抽象作品で好感を持った。

◆横須賀幸正(よこすか ゆきまさ)の「わだつみの・・・・」は現実と空想の世界を行ったり来たりする眩暈(めまい)のような感覚を味わえる作品だ。描き込まれているオウムガイそのものは超自然物ではないが、ガラス球の中に封じ込まれても活き活きと泳いでいる様が非現実的で、それをさりげなく見せているところが味わい深い。

<その他の具象>
「えっこれが水彩?」と驚いたのは、◆白井洋子(しらい ようこ)の「毀(こわ)れゆく刻(こく)」だ。置時計、楽器、ワイングラス、パンなどの静物が描かれている。グラスの1つが棚から落下する模様がリアルで、トロンプ・ルイユ(だまし絵)の様相を呈している。そして全体の感じが重厚で、まるで油彩なのだ。昨今、西洋画と日本画の境界線が曖昧になっているが、油彩と水彩のボーダーラインも取り払われつつあるのか。

「写真かな?」と思ってよく見たら油彩だったのが、◆長内さゆみ(おさない さゆみ)の「秋の水辺」だ。塗り方などはそんなに緻密ではないように見えたが、少し離れて見ると写真のようにリアルに感じられる。それだけが芸術ではないかもしれないが、このような描写する力に対しては素直に賛美を送りたい。

<その他のコメント>
◆グェン・ディン・ダンの「The Exit(出口)」の作品解説文に誤りがありますよ。「左端にはショパン、モーツアルト、グリーグの楽譜がある」と書いてありますが、モーツアルトの楽譜は描かれていません。グリーグが1冊で、あとの3冊はすべてショパンです。すみません、音楽のことになるとつい突っ込んでしまって。以上のコメントは、この作家と作品の価値をおとしめるものではありません。念のため。

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