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2008年9月26日 (金)

木下牧子 作品展3 [室内楽の夜]

2008年9月26日(金)
木下牧子 作品展3 [室内楽の夜](津田ホール)に行った。現在活躍している作曲家の作品、しかも大好きな室内楽なので楽しめた。

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本来私はポリフォニー嗜好なので、声部間のからみが明瞭にわかる作りを好む。そういう意味で今回のコンサートでは冒頭のピアノ組曲「夢の回路」が最もすんなり楽しめた。しかしそれとは逆行するようだが、声部が不明瞭な全体としての響きの美しさも味わった。これがで私の狭い視野を広げてくれたという意味で、今回のコンサートの最大の収穫ではなかったかと思う。

ピアノのための「夢の回路」
[] 四度積み上げ和音など、不協和な和音の連鎖が続いた後、小休止の際に協和音が鳴っていた。これはフレーズの完結性を示すための措置であろうか。響きが綺麗だった。
[
] 同音連打、意図的にずらしたリズム、時々多調の響きなどがミックスされ、先住民の音楽やジャズを連想させる。時々ぷつっと切れて仕切り直しをするが、これは木下牧子の特徴の一つだろう。音素材の組み合わせが面白く、飽きないで聴けた。

ソプラノ、ハープ、ヴィヴラフォン、チェロのための「ヴォカリーズ」
ハープとヴィヴラフォンの音が溶け合って茫洋な感じを出し、その上に器楽的に扱われたソプラノが明瞭な響きを聴かせる。チェロはその中間で、和音で曖昧な響きの中に入り込んだと思うと、ピチカートで明確に音を刻んだり、さらにはバッハ等のフーガで使われる模倣のようにソプラノのフレーズを追いかけたりする。時々、ハープとヴィヴラフォンが同じことをする。そんな作りだ。
自由な三部形式で、中間部は長三和音が主導的になり、明るい響きに変わる。そこで聴こえる旋律は多分に古典的である。その古めかしそうなメロディーに近代和声の味付けがされているという感じだった。最後にチェロが朗々とメロディを回想して終る。
美しい曲だった。

クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのための「ねじれていく風景」
[
] ソナタ形式かと思ったが、自由な三部形式と呼んだほうがよいかもしれない。上行音階をモチーフとし、そのモチーフが姿をいろいろ変えて繰り返される。音階をテーマにして曲を練り上げるというのは、授業で課題制作をやっているようだ。作曲家として、このような制約を自分自身に課し、気のきいた作品に仕立て上げるというのは一種の快感であろう。
[
] これも三部形式かな。一つの楽器がメロディーを奏で、他の楽器がトリルやアルペッジョでお供するという作りになっていた。
[
] 主としてピアノによる硬質の旋律と、他楽器による柔らかい旋律を対比させ、発展させていった感じだ。
全体的に律動感にあふれる好曲だった。

フルートとパーカッションのための「夜はすべてのガラスである」
自由な三部形式だと思う。フルートと打楽器という溶け合いそうにない組み合わせなので、なんとなく空虚な感じが漂い、東洋的な雰囲気が醸し出された。フルートの特殊奏法が尺八を連想させたからであろうか。フレーズとフレーズに挟まれた「間」も日本的情緒を出していた。
個性に満ちた曲だった。

パーカッション・アンサンブルのための「ふるえる月」
開始後間もなく、ダブルベースの弓でヴィヴラフォンの鍵盤をこすって倍音を出していたが、他の音から浮いて美しく映えて聴こえた。3つの音で構成される動機を各楽器でぐるぐる回しながら積み上げていく作りに見えた。(あるいは3つではなく、4つか5つかもしれないが)。ヴィヴラフォン3台にマリンバが加わった響きは素晴らしい。
ずばり、響きの美しい曲だった。

パーカッション・ソロ+アンサンブルのための「打楽器コンチェルト」
[
] ここでもぷっつり切れる特徴が出ていた。拍子木をだんだん速く打ってゆくような打鍵を、音を変えながら各楽器で受け渡してゆくところがあった。これは聴き方を変えると、メロディーの1音1音を違う楽器で奏してゆくとも考えられる。
[
] 全編、不協和音が鳴り続けるのだが、不思議な透明感がある。どんな和音を使っているのか興味がある。
[
] 荒々しいリズムと民族的な音階にジャズの要素を混ぜたような曲だ。全楽器が鳴ったり、ソロが活躍する部分があったりして、バロック音楽の「合奏協奏曲」の要素を感じ、楽しく聴けた。
演奏する楽しみ、聴く楽しみの両面を意識した作品だと思う。

以上、さすがに気鋭の作曲家だけあって、どの作品も聴いて楽しく、参考になる点も多かった。

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