アリスタ・トリオ
2008年6月9日(月)
「ウィーン・フィルのメンバーによるアリスタ・トリオ」(ミューザ川崎)に行った。「トリオレヴリー」メンバー3人で「一流」のピアノトリオを聴き、演奏の参考にしようという狙いだった。
実は私はウィーンのスタイルは好まないので、楽しむというよりは演奏法で学ぶものはないかという「学習」的な目的をもって聴いた。案の定テンポルバートが大きく、そういう点はいただけなかった。
冒頭、ベートーヴェンとメンデルスゾーンというドイツのトリオを続けて演奏したのだが、似ていそうでドイツとオーストリーはこうも違うのかと呆れた。「大公トリオ」第1楽章の最初の1拍と2,3拍目が大げさにいうと倍ぐらいの差があった。あれでよく縦が合うものだ。またメンデルスゾーンのトリオ第1番(第1楽章のみ演奏)は、速度があまりにも速く、落ち着いて聴けなかった。
そういう意味だと、最後に演奏した「ハンガリー舞曲第5番」はこのグループの特質に合っていたようだ。作曲者はドイツ、題材はハンガリーだが、オーストリー的な伸び縮みが曲想にマッチしていたようだ。
ショスタコーヴィッチの「5つの小品」は知らない曲だった。独特の旋律の屈折が少なく、物足りないほど穏やかなたたずまいだったので驚いた。
マイナス面を多く書いてしまったが、このグループの演奏技術が非常に高いことは認める。というか、うますぎてアマチュアとして参考になる点が少なかった。チェロの音色がとても美しかったが、あれはチェロではなく別の楽器ではないかとまで思った。
このような点が、逆に残念だった。贅沢な話だが、もう少し下手な演奏だと真似することによって自分たちの向上につながるのになあ。
なお小品のいくつかは、このグループが自分達で編曲したのではないかと思った。ヴァイオリンがフラジオレットで旋律を鳴らしたり、既存の編曲では聴いたことがないオブリガートをチェロが弾いたりと、ユニークな内容があったからだ。そしてそれらは高度な演奏技巧の裏打ちがないと弾けないものだった。このように聴衆を楽しませるにはどうしたらよいかと工夫する姿勢は素晴らしいと思う。
仮に私たちがこのグループの譜面を借りて演奏を試みたとしても、こなせるのはプロのピアニスト「よいこ」さんのみだろう。ヴァイオリンとチェロはたぶん何を弾いてるのかわからないぐらい目茶目茶になるのがオチだと思った。
以上、若干の成果を持ち帰り、ベルギービールで乾杯した。
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