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2008年5月14日 (水)

国展:彫刻部

2008年5月11日(日)
「国展」彫刻部に関しては真っ先に岩崎幸之助の「水太鼓」を紹介したが、その他の彫刻にも興味深いものが多数あった。

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まず原口健一だが、これらの作品を一目観て何が思い浮かぶだろうか?

Dscf1484

そう、ブランクーシの「空間の鳥」だ。向かって左の大きいほうが「秋暁の月」、右の小さいほうが「雲杉」という作品だが、どちらもブランクーシの傑作に似ている。このように巨匠の作品に類似した形状で勝負するのは勇気を必要とするだろう。一つ間違えると人真似呼ばわりされかねない。

しかし原口作品はそのような懸念を退け、独自の個性として立派に自立していると思う。ブランクーシの作品に比べ、より柔和な曲線を描き、より有機的な雰囲気を醸し出している。東洋的な叙情を内に秘めているとでも言おうか。二つの作品をこのように並置することにより、さらにその個性が拡大されているようにも見える。

次は粕谷圭司の「層位(ゆらぎ)」だ。これは妻(仮名ジョアンナ)が「面白い」と評した作品だ。

Dscf1488

一見、一本の樹木の周囲を積み重ねた立方体が覆っているような構成だ。しかしよく見ると樹木が途中で寸断され、空洞化している。また回りの立方体も直線ではなく曲線で構成され、何となく頼りなさそうだ。これは「ゆらぎ」という副題によくマッチしている。

これも有機的な感じに見えたが、実際は合板を素材としていると聞いた。合板という工業的な材料を用いて、自然界のゆらぎを表現したと考えると、これまた意義のある作品に見えてくる。

菊地伸治の「彼の居場所」には子供時代に戻されてしまった。

Photo

一見、抽象作品に見えるのだが、よく見ると塔状をした岩盤をくり抜いて造られた山城を表していることがわかる。一番下から時計回りに階段が掘られている。塔をぐるりと回る階段は、やがて途中で消え、そこに開口部があり塔の中に入れる。そして別の開口部からまた階段が上へ延びており、さらに次の開口部へと進める。こうして最後には頂上の城までたどり着くことができる。

私は作品の回りをまわりながら、この階段と開口部を目で追った。これが実に楽しいのだ。子供時代に帰ったような、何とも言えない奇妙な感じである。

作品は全体構成にも優れており、自然石のざらざらした肌触りの部分と、黒みかげ石であろうか、きれいに平面に磨かれた人工的な部分とが組み合わされ、微妙なハーモニーとリズムを奏でている。

そして芝田典子の「陽光」。これは岩崎幸之助の作品と並んで、今回私が最も気に入った作品だ。

Dscf1482

直線と曲線の組み合わせによる構成の面白さは群を抜いている。丸く掘り抜かれた3つの穴に落ちる影までが、その構成的な興味を助長しているかのようだ。

ここでもブランクーシを思い出した。数学的構成という知的・人工的な側面と、質感、肌触りなどの自然的な側面の同居である。彫刻の醍醐味はこのコンビネーションにあると言ったら言いすぎだろうか。

他にも面白い作品が目白押しだった。出来栄えはみな同程度だから、ここで言及しなかったのはほんの偶然にすぎない。紹介しなかった作家の方々、すみません。

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