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2007年11月27日 (火)

竹ノ内博明ピアノリサイタル

2007年11月26日(月)
竹ノ内博明ピアノリサイタル「喪失と回帰」(トーキョーワンダーサイト渋谷)に行った。ジョヴァンニにしては大変珍しく、友人以外の演奏家のコンサートに自らの意思で行ったのだ。

これは未聴の現代曲がずらり並んだプログラムもさることながら、チラシの魅力によるところが大きい。そもそも今回のコンサートにいったきっかけは、同じ会場で開催されたマリーナ・カポス展を観たおりに手にしたチラシだった。そしてその場でこのコンサートに行こうと即決したのだ。

チラシが発するオーラを、もしそのままライブで受け止めることができたら、このコンサートは少なくとも1万円の価値があると見積もった。料金は2千円だ。結果的には、チラシがあまりにも素晴らしいために「チラシ負け」していたが、それでも5千円の価値はあった。差し引き「お得」だったわけだ。コンサートの価値を金額で示すことはよろしくないかもしれないが、わかりやすく書いてみた。

いざ演奏が始まってみると、私は自分自身の変化に気がついた。昔は、今回演奏されるような「いわゆる現代曲」に夢中で、楽譜や音によく接していた。それに比べると最近はサロンコンサートなどに出演して古典ものを弾くことが多いし、また展覧会めぐりにはまって「現代音楽」からご無沙汰ぎみだった。その分、「現代音楽」を受け止める器が小さくなっていたようなのだ。

私は、たぶん多くの人がそうであるように、かつてはベートーヴェンに代表されるような「主題労作」が芸術音楽の真髄だと信じていたし、今でもそれが頭にしみついて離れない。だから今回のコンサートでも、その趣味が頭をもたげてきたのだ。

そういう趣味にかなった曲を今回のプログラムから拾うと、アレクセイ・スタンチンスキーのピアノソナタ第2番ト長調になる。第1楽章がフーガというのも嬉しい。バッハのフーガを聴くような感覚で、近代和声の味付けもあり言うことなしだ。

冒頭の二重フーガの主題のうちバスで提示されるテーマは跳躍を伴って律動的だ。展開されてゆくと、音が跳躍する際、一つ上の声部を追い越して音高が逆になったように聴こえた。その「くんずほぐれつ」の感覚が面白い。そして後半になるとこのテーマは一層自由になり、最初に提示された音程関係を保持せず、跳躍の幅を広げ、よりダイナミックな飛び跳ね方をする。こういう全体構成はとても面白い。

ジョナサン・ハーヴィーの「メシアンの墓」はCDで鳴らす音とピアノの生演奏とのからみが面白かった。一種のヘテロフォニー効果が生じていたようだ。

同じくプログラム最後に置かれたジョナサン・ハーヴィーの「イェイツによる四つの映像」では、ピアノの内部奏法で低音を叩き、くすんだ音を出していた。これが普通の奏法だと音が大きすぎて高音の部分を聴きにくくしてしまうだろう。そういう配慮かと思った。

高音と言えば、全体に共通していたのは、高音で奏される不協和音が鐘の音のように美しく響いていたことだ。ペダルを上手に使っていたのだろう。

私の趣味からすると、グリーグの曲は余計だった。20分近くもかかる大曲だが、面白くないのでその間じっと我慢していた。せっかくの「現代音楽」コンサートなのだから、新しい曲に徹底的に特化して欲しかったなあ。

アンコールは2曲。二つ目はドビュッシーの有名なアラベスク第1番だが、一つ目がわからない。エマヌエル・バッハのクラヴィーア曲と推測した。全体スタイルが後期バロックのようで、和声が自由奔放に変転していたからだ。誰か何の曲か教えてください。

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コメント

「チラシ負け」という言葉に反応してしまいました。
そうなんです。よくあるんです。
同じく「ジャケ買い」して中身を聴いて失敗したというCDもあります。
今まで何度優秀なグラフィックデザイナーの策略にハマったことでしょうか。
やっぱり最初は「見てくれ」で勝負なのでしょうか。
よしっ、私もがんばるわ!

yannさんお久しぶりです。お父様は災難でしたね。沢山の人から声援がきて、さすがyannさんだと思いました。

「グラフィックデザイナーの策略」ですが、yannさんご自身がデザイナーでおられてもハマることがあるんでしょうか?なら素人はなおさらですね。

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