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2007年11月 8日 (木)

堀木エリ子の世界展

2007年11月8日(木)

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「堀木エリ子の世界展 和紙から生まれる祈り」(そごう美術館:横浜)に行った。
この展覧会には素直に感動した。素晴らしい作品群だ。

堀木エリ子については、芸術を支える世俗的側面(ビジネス)、芸術を裏打ちする技術的側面(職人)、そして芸術の形而上的側面(美)の融和というものを感じた。それが今回の展覧会の(私にとっての)観賞テーマとなった。

堀木エリ子は変わった経歴の持ち主だ。都市銀行(ビジネス)から和紙を扱う会社に転職。そこで見た和紙梳き作業(職人)に魅せられ、自ら和紙の手漉きを始めたという。やがて和紙の技術を開発しながら作品を発表(美)してゆく。このビジネス・職人・美という3つの要素が見事に融和・調和してアーティスト堀木エリ子ができあがったというわけだ。

彼女のビジネス的才覚は「立体和紙」で特許を取得したことで示される。しかもこの技術は新潟の地場産業にまで育ったというから驚きだ。また美術館に設けられた立体和紙の制作体験コーナーには子供達が多数訪れ、次世代のファンまで養成してしまう。将来への布石であり、時間的な拡がりを感じさせる。

一方、彼女の職人としての生き様もすごい。和紙の「三重苦」とも言いたくなる「燃える」、「破れる」、「変色する」という弱点を技術的改革により克服してゆくのだ。またガラスなど他の素材との組み合わせにより強度を増すなどの工夫も怠らない。和紙を埋め込んだガラス板の作品があるが、割れても破片が飛び散らないという特性を持つという。この「安全性」という側面は、またビジネスにも通じる特質だ。

VTR
コーナーでは彼女とアシスタント数名が巨大な和紙に水を打っているシーンがあった。水をかける方向(縦・横)によって文様が異なるのだそうだ。サイズの大きい作品の場合、10人が2カ月かかって制作することもあるという。まさに職人の意地を見るようだ。

和紙は光と相性がいい素材だ。彼女の照明器具は、和紙の柔らかさに光が優しくなるようだ。VTRでは「フロントライト」と「バックライト」の相違を見ることができた。なるほどバックライトだと渋い感じになるなあ。このように彼女は和紙と光のコラボレーションを通じて美を求めているようだ。

アーティストが作った照明器具というと、フランク・ロイド・ライトを思い出す。拙ブログで「ライトのライト」と駄洒落を言って喜んでいたが、あのライトだ。またイサム・ノグチも素晴らしい作品を残してくれた。しかし、和紙の特質を活かすという点では彼女に及ばないと思う。なにしろ和紙の専門家だから。

もう一つ特筆すべきは「和・洋の融合」だ。ミッキーマウスなどディズニーキャラクターとのコラボレーションは、どちらかというと表面的な和洋折衷だと思った。しかしギフトラップは、まさに贈り物を包むという日本的文化と、その洋風の中味(洋酒など)の本物の調和美といえよう。

そういえば十二単(じゅうにひとえ)のようにカラフルな和紙を沢山重ねて梱包し、それを剥いでいくとあの高価なドンペリが現れるという演出には心にくいものがあった。サントリーの「響」、「山崎」のラベルも和・洋の美しい調和が見られた。なんだかアルコールが欲しくなってきた。この辺で筆を置こうっと。


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