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2007年11月20日 (火)

第11回アラベスク コンサート

2007年11月16日(金)

11回アラベスク コンサート「飛翔(たびだち)」(南大沢文化会館 主ホール)に行った。このシリーズは前回(昨年11月)初めて行き大変楽しかったので、引き続き今年も足を運んだ。まだ2回目だけどリピーター気分だ。

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「アラベスク」は次3つの角度から楽しむポイントがある。
1.個人の個性とユニットの個性

「アラベスク」には演奏メンバー8名、賛助演奏2名、ナレーションメンバー1名の合計11名が登場した。この11人がそれぞれ個性を発揮している。同時に「アラベスク」では2人、3人などのユニットが形成されるが、それがまた個人とは異なる個性を光らせているのだ。

2.前回比較

「アラベスク」は前回のコンサートと比較すると面白い。まずは1年熟成したことによるスキルアップが感じられる点だ。これはまさに演奏者の努力が形になる瞬間であり、素直に拍手を送りたい。そしてもっと面白いのは、全体の組み立ては極めて類似しているのだが味付けが微妙に変えられている点だ。

3.ナレーションが活躍する独特の構成

演奏と演奏の合間には、奏者用の椅子を並び替えるなど裏方作業が入る。「アラベスク」ではそこでナレーションが入ることにより、観客が楽しさを持続できるシステムができている。このナレーションは、単に曲と演奏者を紹介するのではなく、曲目にちなんだ小話が展開されるのだ。それも主としてナレーターの自作自演というからすごい。

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以上の「アラベスクを楽しむ3つのポイント」を踏まえて演奏者・ユニット毎に感想を書いてみたい。(文中、演奏者は敬称略、プログラムの「出演者からのメッセージ」の順番)

♪大久保康明<テノール>はずるい!柳田るりことのユニットでプッチーニの「トスカ」より「おお、優しい手よ」を歌ったのだが、役得で彼女の手をしっかり握っていた。前回も同じことをしてたんだよ。手に乗るから「テノール」なんちゃって。

独唱では、大久保はトスティの「マレキアーレ」とグノーの「ロメオとジュリエット」より「恋よ、恋よ」を歌った。いずれの曲でもグランドピアノの蓋が開けられていた。ピアノの音量に歌がかき消されないかと心配したが、バランスは良く、美しいテノール(ベルテノーレ:大久保のニックネーム)健在なりを示した。

♪柳田るりこ<ソプラノ>は真打ち登場のステージでソロを歌ったが、これが前回と同じ作曲家 小林秀雄の「日記帳」だ。昨年の「落葉松」では歌曲をオペラの如く歌いあげたのが印象的だった。それに対して今回は「さび」の部分が控えめに出来ていたので、その分抑制された感じになった。それでも、頂点の音は高らかに響かせ、期待を裏切らない名演だった。この辺の微妙な「前回比較」は面白いんだよね。

大久保とのユニットでの柳田は「手乗―る」攻撃でひるむかと思ったら大間違い。パンチの効いた歌声で逆に大久保を圧倒する部分もあった。表情も豊かで、さすがオペラ歌手だった。


♪浅田明美<フルート>はシャミナーデの名曲「コンチェルティーノ」を吹いた。昨年はモーツアルトの比較的おとなしい曲だったので、今回は難曲に挑戦だ。速いパッセージが随所に出てくる曲だが、しんどいという表情を全く出さず見事に演奏した。

また折田緑、升谷奈保と組んでクヴァンツのトリオソナタを演奏した。この曲は私も通奏低音をチェロで数回弾いた経験がある。冒頭奏される主題のなんと美しいこと!浅田、折田はそのイメージ通りの響きを聴かせてくれたので嬉しかった。

♪折田緑<フルート、オカリナ>は浅田とのユニットに加え、ギターの佐藤順子とユニットを組み小品を4曲披露した。圧巻だったのはルスティケリの「鉄道員」のオカリナ演奏だ。最初、オカリナってあんなに大きかったかなあ?と思ったが、それは低音域用のオカリナだった。そして次に中音域の楽器に、そした最後に高音域のオカリナへ取替えながら演奏した。これら3つのオカリナの個性が見事に引き出され、また最後の高音が伸びてゆく瞬間は感動ものだった。

フォーレ「シシリエンヌ」、本谷美加子「ニーニョス」、平吉毅州「真夜中の火祭り」もそれぞれの作品の個性を引き出した演奏で素晴らしかった。


♪佐々木真実子<ギター>はトローバの「スペインの城」より「トレガード」を独奏した。ピアノならわかるがギターでメロディーと伴奏を同時に弾くのは大変だろうな。いい雰囲気が醸し出されていた。
また佐々木は佐藤順子との2台ギター・ユニットでゴンチチの「パイン・バンブー・プラム」を演奏した。これに先だちナレーションの宮本美智枝が題名の3つの植物を繋げる小話を披露していたのが印象に残った。そして演奏だ。このユニットは昨年もゴンチチの「マイル君とパブ谷のクリマロ君」を取り上げたが、今年はさらに緊密なアンサンブルに成長していた。


♪佐藤順子<ギター>は佐々木と同様、ギター演奏にブランクがあったそうだが、そんな事を感じさせない堂々とした演奏だった。佐藤は佐々木とのユニットに加え、折田緑のフルート・オカリナの伴奏を2度受け持った。クラシック(フォーレの「シシリエンヌ」)、映画音楽(ルスティゲリの「鉄道員」)、日本人の作品(本谷美加子の「ニーニョス」と平吉毅州の「真夜中の火祭り」)という事なるジャンルの音楽を弾き分け、折田を助けていた。


♪今野恵子(いまのけいこ)<ピアノ>は大久保の3回のステージ全てのピアノを受け持った。前回同様、声楽特有のテンポの揺れにもピッタリついてゆくアンサンブルの妙を見せた。歌手から信頼されているんだろうな。
ソロではリストの「小人の踊り」を演奏した。19世紀半ばの曲なのに増和音を含んだ近代音楽の萌芽を感じる。小人を暗示するためか高音主体の作りだが、今野は適度にしっとり、適度にカラっとした美しい響きを出していた。ペダルの使い方が上手なのだろうか。

♪升谷奈保<ピアノ>はショパンの「子守歌」でトップバッターを努めた。簡素なたたずまいだが、1843年から翌年にかけて、なんとあの「舟歌」の直前の作曲されたショパン晩年の作品だ。それだけに味わい深さがあった。
升谷はフルートや歌とユニットを組んだ。フルートとのステージは内容的には伴奏だったが、ソプラノの柳田るりこと演奏した小林秀雄の「日記帳」は伴奏ではなく、立派なアンサンブルだった。前回も同じユニットで同じ作曲家の「落葉松」を演奏したが、前回も今回もソプラノがやりたい事を察知して、それに合わせて弾き方を調整していたようだ。間の取り方などはずいぶん難しかっただろう。


♪宮本美知枝<ナレーション>は曲と曲の間で話をするので出番が最も多い。驚くべきは、ほとんどのナレーションを自分で創作しているという点だ。最初は曲目と何の関係もないような話で始まる。しかしそのうち内容が二転、三転して、いつの間にか次の演奏曲に繋がる内容に変化しているのだ。他のメンバーから「女優さん」と呼ばれているが、なるほどいいムードを出している。話の登場人物により声色を変える技も持っている。アラベスクのユニークな側面を支える貴重なメンバーだ。


♪栗山安奈<ヴァイオリン:賛助出演>は一宮明代と組んでサラサーテの「カルメン幻想曲」を弾いた。定番の難曲だが、栗山はしなやかな手首を駆使して軽々と弾いてしまった。その実力はベストプレイヤーズコンテスト総合第1位などの勲章からもうかがえる。また弦楽合奏を主宰することから、人望も伴った人だなという事がわかる。

途中で曲の終わりのような切れ目があり、誰かが拍手したので私もつられて手を叩いてしまった(笑)。栗山はニコっと笑ってさりげなく次の部分に移っていった。フラジオレットでメロディーを奏でるところがあったが、よく鳴るなあと思った。来年は何を弾くかな。楽しみだ。


♪一宮明代<ピアノ>は栗山と同窓で、ユニットを組むことが多いのだろう。二人の息がぴったり合っていた。でも今回は内容的に伴奏だったので、もったいなかった。次回以降は栗山と本格的なアンサンブルをやって欲しいな。例えばブラームスのソナタとか・・・。何たってソフィア国際コンクールで1位のピアニストなのだから。

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