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2007年7月29日 (日)

パウル・クレーと十二の幻想

本ブログでおなじみのF君から楽しい本をもらってしまった。吉行淳之介著「夢の車輪 パウル・クレーと十二の幻想」(文藝春秋)だ。

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文学と絵画のコラボレーションというわけだが、この二人の取り合わせは一見ミスマッチに感じる。等身大のオジさんの視点が顕著な吉行の小説と、天使を想わせる上品なクレーの絵画とは接点が無いかに見えるのだ。しかし、吉行はこのミスマッチを逆利用したのかもしれない。つまり自らの小説の比較的弱い「上品さ」という側面を、クレーの絵で補完したのかもしれないのだ。そうなると、この作品は「計算されたコラボ」という範疇に入れられるかもしれない。

一方、次のような関係も見えてくる。吉行の短編は、日常生活を舞台としながら、そこから突然引き離されて異次元へと誘われる幻想性を有している。これに対してクレーの幻想は、最初から夢物語で始まる。これらの相違による落差を利用しているという憶測もある。つまり吉行の小説の「現実に近い、現実に立脚した幻想」をクレーの「最初から幻想」の絵によって、より遠くの次元の幻想へ飛ばしてしまう、という仕組みだ。

別の言い方をすれば、吉行の小説の活字だけを読むと幻想度が低い。その直後、クレーの絵に眼を転じると、たちまち幻想度が高められる。次に再び吉行の文章に眼を戻すと、また幻想性が低くなる・・・。この繰り返しにより、現実から遠ざかったり現実に戻ったりして、その揺れ動きの振幅の大きさにより、一種の眩暈(めまい)を生じさせるという効果があるかもしれない。

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そんなことを考えて本を開いたら、ムンク展の割引券が挟まっていた。「ジョヴァンニよ、行きなさい」とF君から指令が飛んだのかもしれない。「はい、行ってきます。」と返事しよう。

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もう一つ絵葉書のようなものもあった。これが何だかわからない。F君から出題されたテストなのかもしれない。額縁の中に平面的なガラクタを押し込んだ、一種のアッサンブラージュのようだ。この額縁がもっと深いとコーネルの幻想的な箱になるが、浅めだからコーネルではなさそうだ。誰だろう?これに答えられないと、F君から「本を返しなさい」と言われるかもしれない。がんばらなくては。

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