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2007年6月24日 (日)

西洋館と日本の器

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「西洋館と日本の器」(横浜山手地区の西洋館7館で同時開催されたイベント)に行った。正式名称は長いぞ。「2007山手西洋館フェスタJUNE ~花と器のハーモニー~ JAPAN 西洋館と日本の器 テーブルコーディネートと空間演出」というんだ。このタイトルを読むだけで、おおよそどのようなイベントか見当がつくよね。

山手西洋館は音楽活動でお世話になっている。7館のうち既に半分以上の4館で演奏した実績がある。その縁もあって、ぜひ行こうと思っていたが忙しくてなかなか叶わず、本日の最終日にやっと滑り込んだというわけだ。雨っぽい天気だったが、逆にその方が涼しくて歩き回るには都合が良かった。

正直なところ、これまでテーブルコーディネートやフラワーアレンジメントのジャンルは全く親しんでいなかった。絵画や彫刻に比べて、今となっては恥ずべきだが、アートとして軽視していたのだ。しかし今回のイベントを観て認識を変えざるを得なかった。7館それぞれにアーティストがついて企画・制作するという趣向なのだが、どれを観ても素晴らしく感動した。

私は呼び方に惑わされている可能性がある。大好きな抽象絵画で「コンポジション」や「構成」という語句はとても甘美に響くのだが、「コーディネート」や「アレンジメント」となるとビジネスシーンをまず思い出してしまうからだろうか。しかし、こうやって素晴らしい作品群を目のあたりにすると、両者の価値が同等に思えてくる。「テーブルコンポジション」とか「フラワーコンポジション」と言い換えてみると、私の感性では、もっと素晴らしいものに思えてくるから不思議だ。

食卓のコーディネートはタブローなどと違って制約がある。何といっても人間が食事をする場を構成するわけだから、椅子の高さ、一人当たりのテーブルのスペース、食器の大きさなど、実際に食事ができないのは困る。これは建築ほどではないにせよ、創造上かなりの負担となることだろう。その中で、これだけ感動を生む構成を創生しているのは、さすがだと思う。

具体的内容については、慣れないジャンルなので詳しく書く力がないが、せめて受けた印象だけでも記しておこう。

♪山手111番館

テーマは「~幽玄の語らい~ 異国の出会い“緑色”の一期一会」で作者は愛知県瀬戸・織部の中島勝乃利。それにアートディレクターの山田悦子が加わっていた。

モダンな陶芸作品が展示されていた。図案化されたアルファベットが装飾に用いられ、近代的なセンスを発散させていた。いくつかの作品には花が添えられていたが、中島作品はむしろ花の助けを借りず、単体のオブジェとして観賞したほうが純粋にその造形美を楽しめそうな気がした。

なお、ロビーではヴァイオリンとピアノによる「アットホームコンサート」が行われていた。ヴァイオリンの松本亨氏は柔らかい音色を出して、ピアノの泉陽子氏と雰囲気ある曲を奏でていた。シュニトケの「古い様式による組曲」など現代作品へ挑戦していたのは意慾的で素晴らしい。なおジョヴァンニもここで演奏したことがあるんだよ。このお二人ほど達人ではないけど・・・。

♪イギリス館

テーマは「Destino コミュニケーション・プランナーがいる風景」「ふたり」から「家族」へ、「乾いた社会」から「やさしい社会」へ」といって、これも長い。ウェディングプロデューサーの羽原俊秀と(株)ノリタケによるテーブルウェアの展示があった。

衝撃を受けたのは2階の領事寝室に施されたインスタレーションだ。「結婚式翌日の朝食テーブルがあるベッドルーム」を表現したものだが、その表現が目を引くのだ。絨毯の上にはたくさんの花びらが散り、ベッドの上にはお祝いのカードや手紙が散乱し、その横にはクーラーに置かれたシャンパン1本、その隣には新郎が着たモーニングが自立型のハンガーに架けられ、部屋の奥には巨大なフラワーアレンジメントがそびえている・・・という具合だ。何を書いても、実際に目で見た印象を表すことは不可能だ。

1階ではプロによる弦楽四重奏のコンサートが行われていた。モーツアルトの「狩」が鳴っていた。何を隠そう、ジョヴァンニたちもこの同じ場所で、しかも同じ曲を演奏したことがあるんだ。もうかなり昔のことなので、イギリス館のスタッフも忘れているだろう・・・というよりスタッフは何代も交代しているだろうから、記憶も何も関係ないか。

♪山手234番館

テーマは「七夕を祝う」室礼とテーブルコーディネート。作者は岐阜県多治見の横山拓也、青木良太、若杉聖子。これに食空間プロデューサーの丸山洋子が加わっていた。

2階の暗い展示コーナーに七夕を厳粛に祝う飾り棚があった。その質感、色彩感が日本ではなく隣国の情緒を漂わせていたのは興味深い。また別の展示室では蝋燭で作った果物のミニチュアが皿に盛られ、見事な装飾が出来上がっていた。壁の上部に細長い一輪挿しが掛けられていたのはユーモラスだった。はからずも厳粛さ・真面目さと自由・滑稽さの対比になっていた。(偶然だが)

♪エリスマン邸

テーマは「土より生まれいづるもの」。シンプルだ。陶芸作家は岡山県・備前焼の藤原和。そして華道家の千羽理應とコーディネートしていた。

何といっても目を引いたのは室内全体に花で満たされた空間構成だ。ひものような物の随所に小さな花瓶を付け、花を活けることにより壁から壁へ花の束が渡されてゆく。室内を満たすオブジェとでも呼ぼうか。

♪ベーリックホール

テーマは「自然から生まれた器」。石川県・輪島塗の輪島屋善仁とディスプレイコーディネータの谷口孝が協力した企画だ。

広い部屋の中央には大きな縁側風の物が置かれ、中心には竹が一列に並べられてやんわりと両サイドを分離していた。ここに杯などが並べられ、照明の工夫とあいまって幻想的な空間が創出されていた。こんな舞台装置で一杯やりたいなあ!

♪ブラフ18番館

テーマは「ジャポネスク ~EAST meets WAET~」。横濱増田窯にプロトコールアドヴァイザーの畑中由利江がコラボしていた。

食器と花とナプキンが見事にコーディネートされたテーブルも楽しかったが、窓にあしらった飾りも良かった。上から何本も平行にひもが吊るされ、それぞれに花などの飾りが付けられていた。中には紙を螺旋状にねじ曲げ、DNAのらせんみたいな飾りもあった。

♪外交官の家

テーマは「Aura of JAPAN」有田・美の旋律。佐賀県・有田焼(色鍋島 今上衛門窯)とフラワーアーティストの前谷裕一の仕事だ。

有田焼の巨大な壺の周りを4つの細長い花器に挿された植物が取り囲んだオブジェは、なかなか見ごたえがあった。この閉じた空間は何となく祭礼的な感じが出ている。テーブルコーディネーションでは黒のナプキンが全体のデザインをよく引き締めていた。

♯♭今回は本当に行って良かった。今後、同様の企画があったらぜひ足を運ぶようにしよう。

2007年6月18日 (月)

切手って楽しい その5

アメリカの考え方は面白い。郊外の電化推進なんていう地味なテーマを取り上げて切手にしてしまうんだから。電化はともかくとして、国土の広いアメリカは都市部と田舎では電線の地下埋没率なんか雲泥の差だろうね。イリノイ州の見渡す限りの穀倉地帯なんて、電柱が地の果てまで続いて見えるんじゃないかな。
_usa_

でもこの切手は味わいがある。どうしようもない田舎なんだけど、こうして絵にすると何となく洗練されて見えるし、訪ねてみたいなという気にもさせられる。一種独特の詩情すら感じ取れる。こういうのがアートの力と言うんだろうか。確かにこのような景色は写真で見せられるより、イラストで見たほうが好きになれそうだ。構図も色調もありきたりなんだが、魅力があるこのデザインを手がけたのは誰だろう?田舎の名も知られないアーティストなんだろうか?

2007年6月14日 (木)

チラシらしさ その2

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これは今は無き西武美術館で1980年に開催された「デューラー版画展」のチラシだ。現在の展覧会チラシはA4版が主流だが、この頃はこのようにB5版が多かった。この色合いは渋く重厚でなかなかいいではないか。「幻想的予言と祈りの世界」という副題も雰囲気を良く表現していると思う。
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そしてこれは半券。現在ではチラシに描かれた文言(タイトルだけでなく副題なども)が半券にも刷られることが多い。しかしこの半券では省かれている。スペースが小さいこともあるだろうが、当時はそれでよしとしていたのかもしれない。

それにしても不思議なのは両者に採用された図版だ。チラシが「サテュロスの家族」で半券があの有名な「メランコリア」(部分)だ。前にも同じような意見を書いたけど、チラシが人寄せの目的を担わされているのなら、これらは逆にするのが普通だろう。つまりチラシに「メランコリア」を載せて人目を引き、来場へと誘致するのだ。しかも半券はスペースが小さいため、せっかくのメランコリアがほんの一部分しか紹介されていない。こんなもったいない使い方をして良かったんだろうか?疑問だ。
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チラシの裏面を見てみると、これも現在のものとは様相が異なる。なんだか美術の教科書の一ページみたいだ。図版が端正に並べられ、誠実な内容の解説が付けられている。気軽に楽しむというよりは、もっとストイックに「美術館に勉強しに来る」という印象を受ける。このあたりがよしも悪しきも「軽い」現在とだいぶ違う。

チラシは面白い。チラシの変遷を辿って「チラシ史」でも編纂したら面白いだろうな。あるいは「チラシと半券の格闘史」というテーマも追ってみたい。最近はどうもスペースが小さい半券が「復権」して個性豊かになってしまい、チラシが逆に押され気味のように思う。だからチラシを応援したくなってしまうんだ。これって「判官びいき」と言うんだろうか。

2007年6月11日 (月)

絵葉書の世界 その9

これは何でしょうか?

「ふむふむ、これは松本俊介のデッサンだな。でもジョヴァンニのことだから引っ掛けクイズかもしれないぞ。あいつは時々人を騙して喜んでいやがるからな。」・・・と思う人がいるかもしれないけど、今回は裏はないよ。これは「松本俊介未発表デッサン展」(フマギャラリー)という展覧会のPR絵葉書なんだ。

でもこれは結構すごいんだ。なぜかと言うと「未発表」というのがヒントだよ。「あれおかしいなあ、どこかで見たことがあるようなデッサンなのに、なぜ未発表なんだろう?」と感づいた人は高く評価されます。

実はこの展覧会は今から28年前の1979年に開催されたんだ。この4作品はその時点では未発表だったんだよ。ちなみにフマギャラリーは当時あった場所にはもうない。ウェブで調べたら銀座の別の場所に同名のギャラリーがあったけど、同じかなあ。すみません、確認していません。

というわけで、この絵葉書はジョヴァンニ所蔵のなかでも愛着のある一点なのだ。もともと松本俊介の大ファンだったしね。

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2007年6月 1日 (金)

商店街恒例の生ビール祭

私の勤務先は一応東京都の中だが、下町にある。下町といっても浅草のように洗練された下町ではなく、田舎の下町だから町並みはさえない。そのさえない街角で、商店街の飲み屋が協力し合って恒例の「生ビール祭」なるものを開催した。本日一日限り、しかも時間が17時から12時間に限定されている。それもそうだな、ビールをただで振る舞うんだから。

無料の魅力に負け、ワイングラス2つ目をゲットしに行こうと思っていた日比谷公園での「ジャーマンフェスト2007」を振ってしまった。しかも昨日もらった100円の金券を持ったまま。惜しいことをしたけど、仕方がない。

会社の同僚と18時頃会場である路地に到着すると、もうあたりは盛り上がっている。500mlぐらい入りそうなプラスチックのカップに生ビールをなみなみと注いでもらい、つまみに楊枝に刺したキュウリの漬物までおまけにもらった。もうそれだけで満足だ。

もう一人が来るはずだったが、なかなか来ない。ビールが無くなって終了宣言された時にようやく駆けつけてきた。主催者に泣きついたら、親切にもカップに取ってあった残りのビールを提供してくれた。田舎の下町は人情があって優しいようだ。

この「ふるまい酒」は商店街で年に2回開催されるようだ。正月といえば鏡開き。1月初頭に樽酒のふるまいがある。そして今回(6月初頭)には生ビールというわけだ。この2回のふるまいの経済効果について試算しようと考えてみた。酒類、つまみの仕入れ費用と、イベントの間自分の店を営業しないことによる機会損失、それからイベントに気を良くした客の店への来店促進(これば一番の目的であろうが)など、パラメータはいろいろある。あまり複雑なので計算をあきらめてしまった。誰か頭のいい人、やってみませんか?

イベントの後、当然と言わんばかり(タダ飲みで帰るのは失礼だし)三人で暖簾をくぐろうと歩きまわったが、ここぞという店に行き当たらない。ようやく釜飯屋に決めて腰を落ち着け、めいめいが好きなものを注文する。先にビール500mlを飲んでしまったので腹が張り、私は酒を注文。焼き鳥などのつまみで楽しいひとときを過ごした。アルコールと美味いものは「別腹」らしく、三人とも異なる種類の釜飯を注文して仕上げにする。有意義な宵だった。

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