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2007年4月 1日 (日)

最終日に行った「図画事件」

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「中村宏|図画事件」(東京都現代美術館)の最終日に駆け込みで観に行った。実は次の3つの理由でもともと好みではないアーティストだったのだ:

1.社会性:ルポタージュ画家として作品に政治的・社会的な要素を含ませる

2.反抽象:具象一本槍で抽象を手がけない

3.グロテスク:一つ目の女子高生などが登場する

ではなぜ観に行ったかというと「嫌いなもの見たさ」とでもいうか、自分の幅を広げるために自分の好みの範囲を超えているものにも目を向けようと思ったからだ。予想通りルポタージュ絵画や女子高生の過激な描写などは感心できなかったが、次の収穫があった。

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1.鉄道ダイヤに基づく作品:抽象画のようなたたずまいで、画面に品があり好感が持てた。  発想もユニークだ。

2.「早稲田祭」のポスター:今見てもインパクトがある。制作当時はさぞ新鮮な感じを与えただろう。学生に支持されたというのがよくわかる。

3.夢野久作の著書の装丁:おどろおどろしい内容を想起させ、なおかつ品性も保つという綱渡り的な仕上がりになっている。

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  こうして中村作品を観てゆくと、私の立場から一つの結論が導き出された。それは、タブローとして観賞しようとすると違和感が先行するが、付随物として位置付けるとしっくり収まるということだ。具体的には、例えば「円環列車」などタブロー作品だと何となくグロテスクで嫌だとなるが、同じような絵が夢野久作の本を飾ると素直に認めたくなる・・・といった具合だ。「早稲田祭」のポスターもしかり、「現代詩手帖」の表紙もしかり、である。

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  では付属物は独立物(こんな言葉あるかどうかわからないが)より地位が低いかというと、私はそうは思わない。一種のコラボレーションと考えればいいのだ。学園祭のポスターは大学のイベントとのコラボだし、本の装丁は文芸とのコラボだ。少々強引だが、ルポタージュ絵画だって「事件とのコラボ」と呼べなくもない。

そしてコラボを成功させるためには相手側について深い理解が必須だ。学園祭は学生が努力した演出・展示内容を暖かく見守り、その真意を理解しておく必要がある。書物は読んだうえで、その魅力のポイントがどこにあるか考える必要がある。ルポタージュは事件についての表面的な知識だけではなく、その背景まで含めての深い洞察が必要となる。そういう準備面を含めて、作者の力量と出来た作品が優れていると評価されるのだと考えるのだ。今回はちょっと理屈っぽくなってしまったな。

 

 

 

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コメント

私は以前から「円環列車・A」の一つ目女子高生が気になっていましたので、楽しみな展覧会でした。
不覚にも「砂川事件」の作者でもあるとは知りませんでした。
グラフィックの仕事が私も特に面白かったですね。
「図画事件」と呼んでいいインパクトある個展でした。

テツさんコメントありがとうございました。一つ目を敬遠する内容を書いて失礼しましたが自分の感じるものに偽りは書けないのでご容赦ください。これからもよろしくお願いします。

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