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2007年4月 5日 (木)

ねりまの美術2007

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「ねりまの美術2007 油彩画と版画」(練馬区美術館)に行った。一見この展覧会は魅力を損なう三要素を備えているかに見える。すなわち、①個展ではなく何人かのアーティストの総華的な併置でジャンルが種々雑多であり、②巨匠ではなく、といって新人発掘でもない中堅画家ばかりで、③かつ展示作品も代表作ではないので中途半端、といった具合だ。しかし、なかなかどうして、楽しさ・面白さの上では今年の展覧会の上位を狙おうかという程に興味深い企画だった。

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小野木学は10年きざみで作風を変えていった。左は1952年の「習作」。微かにキュビズムの影響を感じさせる人物群像だ。あるいはバロック絵画の異才ルカ・カンビアーソのDNAを継承しているとでも言えようか。そして右はほぼ10年後の「ユニコーン」(1961年)。ギュスターヴ・モローらが描く従順そうなユニコーンと違い、獣性と魔性を併せ持つ荒々しい印象だ。フォーヴィズムとアンフォルメルを混ぜたような感じになっている。

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それがさらに10年経つと「風景」(1972年)のように完全な抽象画に変貌を遂げる。山口長男の抽象画と隣あわせに展示されていたが、どちらも色の種類を少なめにして清楚な感じを出している。これは油彩だ。

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そして版画にするとなぜか風景が英語になる。「Landscape T.L.V.」と「Landscape T.L.J.」はシルクスクリーンにエンボスを施したものだ。曲線主体なので幾何学的な図柄なのに温かみを感じさせる。「習作」から20年でこれだけの変貌を遂げるのだ。

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一方、池田龍雄も作風の転換を見せている。これは1952年に描かれた油彩「十字街」。ピカビアによく似ている。曲線を生かした独特のキュビズムの扱いで、観ていて楽しい。抑制された色調も好感度を高めている。

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これは10年後のリトグラフ「世間」(1962年)。右からいくつもの突起が出ているが、これは世間の冷たいあしらいであろうか。そして左の人物像はその荒波に耐え忍ぶ作者本人の姿なのか。重そうなテーマだがユーモラスに扱っているので救われている。

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それがさらに10年経つと「梵天」シリーズに変容する(1974年頃)。曼荼羅から抜け出たような奇怪な文様が妖しい色彩を施されて対置されている。宗教的であると同時にSF的でもあり、観ていて飽きが来ない。

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菊池伶司という版画家は知らなかった。木口木版画でシュールな味わいを出している。4点展示されていたが、作品名はみな「無題」。作品の内容そのもので勝負という感じだ。さすがにエキサイティングな版画だった。

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木口木版画といえばこの人、柄澤薺の作品も4点展示があった。これは「パンドラの箱」。この前、鎌倉の近代美術館での個展に感動した余韻がまだ冷めていなかったので嬉しかった。

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大好きな画家、野見山暁治の作品もあった。これは「落日」。色彩と形態の調和がよく取れていると思う。

こんなに楽しんで入場料はワンコイン(500円)。図録も500円だから両方で千円だ。これはお値打ちだね。

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