« 切手って楽しい その1 | トップページ | 20世紀美術探検 ②マレーヴィチのティーセット »

2007年3月 2日 (金)

20世紀美術探検 ①ジッテルの生活アート

20_
やっと「20世紀美術探検」(国立新美術館・乃木坂)に行けた。もっと早く行きたかったんだけど、音楽のほうで忙しくて時間が取れなかったんだ。物を持たないで借りてばっかりいる美術館って大丈夫かなと思った。でも展示点数が多く、楽しめたので良かった。

展示は20世紀アートのトレンドをほぼ順を追ってトレースするように並べられていた。だから流れに乗って追体験というか、教科書をおさらいするような事ができた。その全容を書いても書ききれないし、それはぶ厚い(けど\2,000と安い)図録に任せて、自分にとっての新たな発見に焦点を当てて書いてみることにした。何回かに分けざるを得ないだろうな。
___7
今回取り上げるのは「造ったもの」のみでなく「造りながら生きる」かたちのアートを感じさせてくれたコーナーだ。アンドレア・ジッテルの展示とVTR放映である。
__84
彼女はロサンゼルス郊外の砂漠地帯にユニット式住宅を据え、そこで生活しながらアーティストとしての活動も行った。米国の女流アーティストで砂漠というキーワードを聞けば、すぐ大好きなジョージア・オキーフを思い出す。VTRを観ていると、一部オキーフのイメージがダブって感じた。

日本語で「生活臭がない人」と言うと、洗練されたカッコいい人のことを指すことが多い。しかし彼女の場合はむしろ生活を肯定し、生活そのものを前面に押し出し、生活にアートの感性を活かし、それを記録して披露するアーティストだと思った。
__85
生活環境が苛酷な砂漠では、手早く家を建てたい。そのために彼女はユニット式住宅を考案し、実際に製作する。そのユニットを裏に岩山をひかえた砂漠の一角に据えて生活を始めた。
__86
衣服を作りたい、あるいは朝起きてすぐ服を身に付けたいという生活上のニーズがある。それを満たすためにボタンやファスナーを廃し、ピンで留める布一枚の服を考案するなどがその一例だ。そしてそれが実に美しいんだな。
__89
またユニット式住宅という画一化された空間を、敷物や壁紙などにより、これまた実に楽しい空間に変貌させてしまうんだ。これが「造りながら生きる」極意と言えるだろう。
_raugh_
これは「ロウ(Raugh)の規則」と名付けられたものだ。Raughとは何かと思って辞書を引いても出てこない。ウェブで調べたら彼女の造語だった。「In Raw」という意味だそうで、日本語では「生の」とか「自然のまま」というような意味だ。彼女の考案したユニット住宅に備える家具などのモジュール群だ。 工業規格製品なのに「自然のまま」というのは矛盾しているようだが、規格化←→個性的、加工品←→自然物という相反する概念を、一つ上の次元で統合しようとしているのだろう。ネーミング一つ取っても、彼女のポリシーが見え隠れしていて興味が尽きない。
__83
ある時彼女は友人たちをハイキングに誘う。その際、一つだけルールが定められている。それは、参加者各自がそれぞれの趣向の衣装をまとうというものだ。とはいえ、そこは砂漠地帯で、しかもごつごつした岩山をよじ登ったりするから、オペラ歌手が着るようなドレスというわけにはいかない。ある程度活動的で、しかし見た目にも個性を感じさせる服を着てきなさいというわけだ。友人たちは、その条件に沿うように工夫したんだろう。様々ないでたちでVTRに登場した。
__88
このような彼女のやり方は、生活に「祭り」の要素を取り入れているように見える。別の言葉でいうと「演出」になるだろうか。普通なら単に裏山を歩き回っておしまいというところに一つ味付けを加えることによって、精神の高揚を意図しているのだろう。

またある時は友人のアーティストが訪ねてきて、彼女の居住地の周りに垣根のように立体作品を配置するというインスタレーションを行う。一つ一つはアッサンブラージュというか、ガラクタを集めた抽象彫刻といった感じだ。しかし、こうして家の周りをぐるっと取り巻いてみるとなかなかの景観だ。 このような行為も、多少強引に意味付ければ、「垣根」という生活密着物にアートの息吹を与えたということになるだろう。つまり本来の目的である「近隣との区分け」や「外敵からの防御」から一歩踏み出し、それを芸術の領域にまで引き上げるという意図があるのだろう。
__87
このようにアンドレア・ジッテルの世界を見てゆくと、そこには一本太い軸が通っていると思う。それを一言でいうと「生活そのものをアートにする」というコンセプトになるだろう。大変印象深く、かつ考えさせられるコーナーだった。

« 切手って楽しい その1 | トップページ | 20世紀美術探検 ②マレーヴィチのティーセット »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/163862/5553235

この記事へのトラックバック一覧です: 20世紀美術探検 ①ジッテルの生活アート:

« 切手って楽しい その1 | トップページ | 20世紀美術探検 ②マレーヴィチのティーセット »

最近のトラックバック