重森三玲の庭
「生誕110年 重森三玲の庭」展(松下電工汐留ミュージアム)に行った。本物の庭を美術館に運び入れることができないため、写真パネル、模型、設計図などの展示に限定されているが、楽しく観賞することができた。これまで「作庭」というジャンルに疎かったので、今後目を向けるための良いきっかけとなった。考えてみれば庭園は抽象彫刻に通じるものがあるので、遅かれ早かれ興味を持つ運命にはあったのだろう。
三玲のデビュー作は東福寺本坊北庭の「市松の庭」だそうだ。飛石を交互に並べて市松模様にしただけのシンプルなデザインだが、とても美しい。でも先人は考えつかなかったのだろうか。コロンブスの卵のようにも思える。それまでは飛石の並びが「線」(一次元)として取り扱われていたのを面(二次元)に広げたわけだ。ではさらに拡張して三次元に・・・というのは観念が先走っているな。失礼しました。ここは素直に三玲の先進性を尊敬しよう。独学でこれほど見事な庭を作ったのだから。
同じく東福寺本坊の東庭は「北斗七星庭」という命名だ。近代的でロマンチックだなあ。円筒形の石が北斗七星に似た配列になっている。さらに高さをいろいろ変えることにより一つ一つの石に個性を持たせ、変化を伴う流れが形成されている。個々の素材の個性と、全体の構成の両面に気を配りながら絶妙な配列を生み出したという感じだ。白い砂の上の白い石という白づくしの世界に黒い影が奥行きを持たせているのも印象的だ。
三玲は渓流に洗われる荒い地肌の巨石を原風景に抱いているという。その感じがよく現れているのが松尾大社の「蓮菜の庭」だ。池にごつごつした大きな石がニョキニョキ生えている。西洋のストーンヘッジは巨石が系統立って幾何学的に配置されているが、その対極としてこのような一見ばらばらな配列がある。東洋的なバランス感覚だ。そこには秩序立ってはいないリズムが感じられる。西洋音楽のリズムではなく、自然のリズムだ。もっともこれらの石は三玲により意図的に配置されたのだから、厳密に言えば自然ではないかもしれないが・・・。
今回展示パネルで観た庭はぜひ実物を拝みたい。東福寺は京都東山だから遠いが、いずれ訪ねる機会があるだろう。楽しみだ。
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