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2006年3月19日 (日)

アンコールその4:子供たち

アンコール遺跡の周辺には多くの子供たちが熱心に土産物を売っていた。日本人と見るや、片言の日本語で「安いよ安いよ」、「たった1ドル」などと言いながらまとわりついてくる。1つでも買おうものなら周囲から子供たちがワァーっと押し寄せて来て、取り囲まれてしまう。小学校の高学年から中学生あたりの子が中心のようだったが、下の兄弟姉妹も一緒に行動し、一部の子供たちは見よう見まねで売り込みの真似事をしていた。ああやってノウハウが伝授されていくのかと思った。

一方、今回のツアーでは小学校を見学する機会があった。男の子も女の子も制服で、赤土の泥が付着しても気にせず校庭をころげ回って遊んでいる。子供たちの目は幸せそうに輝いている。一緒に旅行に行った娘は「カーワイー!」と叫んでいた。カンボジアは旧フランス領だが、学校では英語と日本語が主流のようであった。ちゃんと「英語クラス」、「日本語クラス」があり、専用の教室まであるのには驚いた。観光客相手のビジネスでは英語と日本語が重宝がられるのだろう。

ここで疑問が沸いてきた。土産物を売っている子供たちを見たのは平日の昼間だ。学校が開校している時間だから、あの子たちは学校に行っていないのだろうか、と。ツアーガイド(日本語が達者なカンボジア人)に聞いたら、午前だけの学校と午後だけの学校があるとのこと。なるほど、それで疑問が氷解した。小さな子供たちは学校以外の時間では必死に土産物を売り家計を助けているのだろう。

こんどは別の疑問だ。学校で英語や日本語を学んだ子供たちは、実家の農業を手伝いことを除けば、観光客相手のビジネスに従事する割合が多いのか?ある情報筋から聞いたのだが、カンボジアではツアーガイドの年収は医者を上回るとか。職業に貴賎はないのであくまで一般論だが、日本などでは、医者のほうが観光ビジネス従事者より社会的地位が高いし収入もずっと上だと思われている。カンボジアではこの「日本の」常識がくつがえされているわけだ。すると子供たちは、ツアーガイドになれば金持になり国民みんなから尊敬されるから、一生懸命日本語を勉強しよう・・・という意識を持って学校に来ているのだろうか。

この国はこれでいいんだろうか。日本のカンボジアに対するODA10年前は15千万ドルに達していた。150億円以上だ。5年前はだいぶ減ったが、それでも5千万ドル(50億円以上)に達していた。今回のツアーで見学した学校も日本のODAで建てたそうだ。でもこのODA投資で建てられた学校で日本語を学んだ子供たちが、放課後には日本人観光客に土産を売り、成長したら旅行会社に勤め、また日本人観光客からせっせとドルを稼ぐという循環は、どこかおかしいと思う

これに対して草の根的に進められた井戸堀りのプロジェクトは有益だと思った。実は見学したその学校にも1つ日本人の指導により掘られた井戸があったのだ。井戸の採掘技術を教え、生活に必要な水を得て、コミュニケーションの場としても活用でき、その後自分たちで別の井戸を掘ることができる・・・という「良」循環が形成される。こういう形の支援のほうがいいと思うんだがなあ。ただ学校も読み書きを学ばせるうえで重要だから、短絡的に批判するのは良くないとは思う。

ここで話を強引にアートに転じるけど、アンコール遺跡などを見ていると、中世カンボジアは「アート先進国」だったとつくづく感じる。タイなどとの戦争のため止む無く放棄した遺跡群は崩壊寸前だったが、当時のカンボジア人の優れたアート感覚を残してくれている。子供たちがそのことを誇りに思い、単に土産物を売るんじゃなく、その「能力」を外の世界に売り込むようにならないかと願う。旧フランス領のためフランス絵画などの影響があってもいいじゃないか。

自分たちが本当に美しいと感じたものを生み出してゆけば、それは自然と先祖のアート感覚と外来のアートの良いところを融合したものになる。純粋なカンボジア産アートでないからと疎んじる必要はないと思う。日本だって西洋絵画の影響を色濃く受けながらも模索を続けて駒井哲郎など独自の感覚が生まれたじゃないか。カンボジアの子供たちの中から優れたアーティストが育つための環境づくりを日本は支援できないか、と思った。今回はちょっとシリアスになっちゃったな。

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